5千万円「年金ネコババ」 日光市がホームページ上で謝罪

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   年金「ネコババ」問題を巡り、社会保険庁だけでなく市区町村の対応の「甘さ」に注目が集っている。中でも目を引いたのが、栃木県日光市。横領件数が多い上、約20年前に処分された5千万円超の「大ネコババ」が、今回初めて明らかになり、ホームページ上で住民に謝罪した。

市区町村は49件中、刑事告発たったの9件

過去の職員による着服事案を謝罪する日光市のHP
過去の職員による着服事案を謝罪する日光市のHP

   社会保険庁は2007年9月3日、年金着服や不正受給について調査結果を発表した。社保庁側は50件1億4,200万円、市区町村側49件2億77万円だった。社保庁分は、わずか4日後の7日に増額訂正があり、2,650万円増えた。件数は50件のままだが「集計ミス」だったという。市区町村分は、3日の発表に回答が間に合わなかったのが174自治体もあった。社保庁の調査関係者は「174自治体がゼロとは考えにくい」と「増額必至」との見方を示している。舛添厚労相も、「着服なし」と報告した1400自治体(全国約1,800市区町村)について「本当かもう1度調べてほしい」と「疑いの目」を向けている。

   また、9月3日の発表では、市区町村側49件の処分内容が明らかにされていなかった。49件の処分内容については、12日のフジテレビ系「とくダネ!」が先取りした形で独自取材の結果を紹介した。49件中刑事告発は9件、懲戒免職は26件だった。社保庁50件の刑事告発27件(告発はしなかったが警察側が書類送検した1件を含む)、懲戒免職41件と比べても「甘さ」が浮き彫りになっている。番組スタッフが調査結果を舛添厚労相へ伝える様子も流れ、舛添大臣は「こりゃ、ひどい話。このときの首長は何やってたの」とあきれていた。

   あきれているのは大臣だけではない。過去のローカルニュースにも流れず、地元住民にも「初耳」のネコババが対外的に発覚したのは栃木県日光市だ。担当課によると、合併前の旧藤原町の職員が5,735万円以上の国民年金保険料を着服していたことが、9月3日の社保庁発表で初めて公表された。5,000万円超の着服額が市区町村側で「2位」の高さを占めたことと、ほかの着服が3件(572万円など)もあったこととも合わせ注目を集めた。5,735万円超の案件は、1984年度から87年度にかけ490人分の保険料を着服した。着服した分は一時免除の申請書を偽造するなど未納通知が相手に届かないよう工作していた。内部で発覚し、職員は89年に懲戒処分を受けたものの、当時は報道されなかった。刑事告発もせず、警察の独自摘発もなかった。

着服しても、降格と減給6カ月という甘い処分

   日光市では、市民に「初耳」となる着服事案が3日に発表され、額も高額だったことを重く見て、4日には市のHPで市民向けに「お詫び」の文章を掲載した。12日現在のHPには、9日付けの更新されたデータが載っている。4件すべての着服案件の金額や処分状況を報告し、市長名で謝罪している。「合併前の旧市町で起きた事件ではありますが(略)その責任を深く感じております」「本人または関係者によって全額返済されております」と説明している。刑事告発・告訴について、市民から意見が寄せられていることにも触れ「発覚した時点で、告訴すべき事件もあったものと感じております」「現在であれば、刑事責任を問うことも考えられますが、すべての事件について時効が成立しており(略)」と、もどかしさも表明している。

   担当課によると、全職員に対しても4日と6日に公金の厳正管理や複数で扱うことなどを求める文書を相次いで出した。合併後の市の規定では、横領をした職員は「金額にかかわらず」懲戒免職することになっている。過去の着服4件のうち、2件は懲戒免職、あとは降格と減給6カ月だった。担当課は「現在なら降格で済ますなどはあり得ません」。しかし、懲戒免職の2人も刑事告発は受けていない。刑事告発については、規定に加えることを検討している。市民からの苦情電話は一括ではなく、各部署で受けるようにしており全体像はまとめていないが「告発見送りなどへ厳しい批判が寄せられました」。

   社保庁と総務省によると、市区町村の再調査結果は9月21日をめどに取りまとめ公表する予定。3日発表の一次調査は、174の「無回答」自治体のほか、209件の「不明」と回答した自治体も含まれている。社保庁などは、「前回不明と回答したところを含め、全市区町村に再調査を要請している」と説明している。

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