朝日新聞社内部のアクセスから、「ウィキペディア」日本語版で820件余りにも上る大量の項目修正が行われていたことがわかった。これは、朝日が2007年9月8日付朝刊で報じた厚生労働省の修正の8倍にも当たる。朝日では、9月11日、全社員に注意喚起したことを明らかにした。
「筑紫哲也 携帯電話を持っていない」と挿入
朝日の内部から、ウィキペディアの「筑紫哲也」の項目が修正されていた
「ウィキペディア 省庁から『修正』」。2007年9月8日付朝日新聞は、こんな大見出しで、厚労省、宮内庁、法務省から修正が行われていることを新聞の顔となる1面で報じた。そこでは、「役所に都合のよい修正が行われていた」と厳しい指摘がなされていた。その批判にも押されて、宮内庁は9月10日、定例記者会見で、修正を名乗り出た職員を口頭で厳重注意したことを明らかにした。また、庁内パソコンからウィキペディア修正ができないようにシステム設定を変えた。
しかし、朝日の記事では、この問題に対する自社の対応に触れていなかった。多くの官庁、企業で修正が発覚している中で、朝日だけが例外ということはあるのだろうか。そこで、J-CASTニュースでは、ネット公開のプログラム「WikiScanner」日本語版で、「都合のよい修正」がないかどうか、早速チェックしてみた。このプログラムは、ウィキペディアに残された企業のIPアドレスから、その企業からの修正内容と件数を自動的に検出するツールだ。
すると、すぐに820件余りもの大量の修正がヒットした。このうち、朝日新聞に関係する項目を見ると、いくつか我田引水らしい書き込みが見られた。例えば、高校球児OBチームの大会である「マスターズ甲子園」の項目では、07年3月6日、
「※2006年大会のルポルタージュ『夢・続投! マスターズ甲子園』重松清/マスターズ甲子園実行委員会編が朝日新聞社より刊行されている」
の一文が挿入され、現在も残っている。
また、朝日のスター記者だった「筑紫哲也」の項目では、06年10月25日、「来歴・人物」の欄になぜか
「携帯電話を持っていない。」
と挿入されていた(現在は削除)。
「アルフレッド大王」「石田三成」といった歴史に関する修正が多い
とはいえ、820件余りの修正の多くは、朝日に直接関係ない項目だ。例えば、「日経ラジオ社」の項目では、05年3月28日、日曜深夜にピンク映画などの音声を流したりポルノドラマを放送したりしていた成人向け番組について
「近隣諸国でも聴取できるため、『国辱もの』との批判もあった。」
と付け加えていた。この表現は、現在も部分的に残っている。
知的な関心がある人が多いのか、朝日内部からは「アルフレッド大王」「石田三成」といった歴史に関する修正が多い。その一方で、「池脇千鶴」のような若い女性俳優、「武蔵中学校・高等学校」などの学校、といったように、自分に関心のある項目への修正が見られる。もし、社員が関わっていたとすれば、社内設備を使ってプライベートなことをしていた人が多いことになる。
朝日は、このような点をどう考えるのか。J-CASTニュースが9月11日、広報担当者に連絡して質問メールを送ると、広報部から「社内規定により、社内ネットワークの業務外使用をかねてより禁止しています。おたずねの『ウィキペディア』への件につきましても、本日改めて全社員に注意喚起をしています」とのFAXが返ってきた。「820件余りもの修正を仕事の合間などにできるのか」「『改めて』なら、最初に注意したのはいつか」などと再質問しても、「お気持ちは分かりますが、回答したことがこちらのすべて」と繰り返すばかりだった。
もっとも、新聞は朝日ばかりではない。読売新聞社は、「WikiScanner」日本語版にプログラム開発者の「お勧め」として名が挙げられており、検索すると朝日より多い850件余りもの修正がなされていた。