ロリータとヤンキーの少女同士の不思議な交流を描いた映画「下妻物語」の原作者として知られる嶽本野ばら容疑者(39)が2007年9月2日、大麻取締法違反(所持)の現行犯で警視庁に逮捕された。「乙女のカリスマ」と呼ばれた野ばら容疑者は、自らもロリータファッションを好み、素顔をベールに包んでいた。
「自分で吸うために持っていた」
映画「下妻物語」の公式ウェブサイト
警視庁から東京地検に身柄送検された嶽本野ばら容疑者。テレビに映し出されたその顔は、心なしか微笑んでいるようにも見えた。あきらめ切った心境なのか、それとも余裕の表情なのか――。
各紙の報道によると、野ばら容疑者は、2007年9月2日夕、新宿・歌舞伎町の路上を歩いていて、巡回中の警視庁新宿署員と視線が合った。その際、突然向きを変えて逃げるようなそぶりをみせるなど挙動が不審だったため、同署員が職務質問した。そして、ズボンの右ポケットにあった黒いきんちゃく袋に、乾燥大麻0.22グラムを隠し持っていたのが見つかった。野ばら容疑者は、「海外で大麻を覚えた。自分で吸うために持っていた」と供述しているという。
野ばら容疑者は、大阪芸大中退後、雑貨店経営など職を転々とした。その間、関西のフリーペーパーにエッセー「それいぬ――正しい乙女になるために」を連載したところ、10代の少女の人気を集め、2000年に「ミシン」で小説家デビュー。02年には、「下妻物語」「エミリー」と、ベストセラー小説を次々に発表した。「下妻物語」は、04年に深田恭子さん主演で映画化され、「エミリー」「ロリヰタ」(2004年)は、三島由紀夫賞候補になった。
代表作の「下妻物語」は、茨城県下妻市に住み、ロリータファッションを好む高校生の竜ヶ崎桃子が、洋服ほしさに始めた個人販売をきっかけに、「レディース」と呼ばれる暴走族のヤンキー少女、白百合イチゴと出会うことから始まる。見た目も趣味もまったく違う2人は、桃子がイチゴの特攻服を刺繍したり、イチゴが桃子の仕事を助けたりして、不思議な友情を育んでいく。ロリータとヤンキーという意外な組み合わせが人気を生んだ理由という。
フリル付きの白いブラウスを着て出演
野ばら容疑者は、自らもロリータファッションを好み、テレビ番組などにフリル付きの白いブラウスを着て出演していた。9月5日付の日刊ゲンダイがマスコミ関係者の話として報じたところによると、「自宅マンションには、少女雑誌や人形が所狭しと並び、ヒラヒラのレースがついたお姫様ベッドで寝起きしている」という。
そんな野ばら容疑者が、なぜ大麻に手を出したのだろうか?
野ばら容疑者のホームページ「NOVALA BOX」には、逮捕前の8月29日、こんな日記の記述がある。
「嫌なことなのだけれども どう頑張ってみても 落ち込む時がある。投げやりになって こんな世界なぞ滅んでしまえと 願ってしまう日がある」
ネット上では、「いや、ショック」「好きなのになぁ」などと、ファンから残念がる声が上がっている。その一方、「乙女のカリスマ」と呼ばれるだけに、こんな声も漏れている。
「39!!見えるっちゃ見えるけど、内緒にしてほしかった」
「本名を見た時(嶽本稔明)と書いてあり、男だったの~と思いました!」
野ばら容疑者は、メディアに露出するときは常に化粧をし、自らのホームページで、仏ロココ朝の全盛期と主張する「1745年1月26日」に生年月日を設定していた。それだけに、ファンは落胆したようだ。
ところで、この事件は、野ばら容疑者にとって転落の道になるのだろうか。
ミクシィの日記では、こんな意見も話題になっている。
「余計人気出るんじゃね?下妻でかなり知名度あがったけど、今回のでもっと上がるっしょ(笑) 某人気バンドも薬やって捕まって、出所したら一気に爆発したしね―」