NHKが参院選の結果や安倍首相の内閣改造といった政治情勢のなかで再び揺れている。2008年1月に任期の切れる橋本元一会長の後任には民間人の起用が政府部内で検討されてきたが、西室泰三・東証会長を有力候補に、それが一気に加速した。
丹羽宇一郎・伊藤忠会長らの名も上がる
NHK次期会長はいったい誰に?
参院選では郵政族のドンで、「NHKの応援団長」といわれた片山虎之助・元総務相が落選。片山氏は菅総務相のNHK受信料2割引き下げに反対した橋本会長にずっと理解を示してきた。橋本会長が値下げに抵抗し続けられたのは片山氏がいたおかげともいわれた。
菅前総務相は07年6月にNHK経営委員長に古森重隆・富士フィルムホールディング社長を抜擢した。古森氏は安倍首相の財界人を囲む会の有力メンバーで、安倍首相の意を受け、NHKの意向など全く無視した人事だった。
安倍-菅ラインが次に狙ったのは次期会長の民間人起用。丹羽宇一郎・伊藤忠会長らの名が上がったが、最終的には西室・東証会長(元東芝会長)にしぼられた、という。豊富な人脈、豊かな国際感覚などが評価された。財界も東証会長のポストが空くので歓迎している。
橋本会長は続投を考えていなかったが次期会長には内部昇格を望んでいた。しかし、片山元総務相がいなくなり政治家の加勢が期待できず民間人会長に抵抗は出来なかった。新総務相に「民間」の増田寛也・前岩手県知事が就任したのも西室氏起用に追い風となった。
菅氏の総務省への影響力は残っている
増田新総務相に期待されているのは地方と都市部の格差是正という旧自治省の仕事だ。旧郵政省の仕事は官僚の助言に支えられてということになりそう。官房長官候補にもなり永田町で力をつけている菅前総務相の総務省への影響力は残っているといわれる。
ところで、安倍首相の信頼が厚く内閣改造で官房長官が「内定」していた菅氏。就任直前、事務所費問題が発覚、官房長官就任は消えた。この事務所費問題をずっと追いかけていたのがNHK社会部だというウワサも出ている。そして、菅前総務相が激怒した、という尾ひれまでついているのだ。
菅前総務相は増田新総務相に事務引継ぎを行った。そこでNHK会長人事があったのは間違いない。増田氏は安倍首相から直接口説かれた経緯もあって首相の意向には逆らえない。菅氏のNHK執行部に対する怒りは倍増、安倍-菅ラインのめざすNHK会長人事はこのままだと狙い通りに実現しそうだ。