お産をするために「抽選」が必要!!
事情は他の病院でも同様で、やはり、この女性の受け入れ要請を断った大阪市の千船(ちぶね)病院も、朝日新聞の「アエラ」(07年9月10日号)に対して、
「当日は午前2時から5時にかけて4件の分娩があり、そのうち3件は帝王切開で、待機中の妊婦も2人いました、当直医と応援の産婦人科医の2人でそれに対応していました。産婦人科の常勤医は7人いますが、つねに出勤態勢を取らせるのは心身ともにプレッシャーが大きすぎます」
と、奈良県立医大病院なみに多忙だった様子を明かしている。さらに同誌では、患者側の行動について
「高度な医療が必要な3次救急の病院に、歩いてこられる程度の風邪を引いた程度の患者が来たり、救急車をタクシー代わりに使ったり」
と言及、患者側のモラル低下が医療環境を悪化させ、結果的に自分の首を絞めることになっている現状を示唆している。
J-CASTニュースが8月31日に配信した記事「なぜ産科医は患者を断るのか 出産費用踏み倒しに『置き去り』」のコメント欄でも、これに通じる傾向の議論が展開されている。
朝日新聞の神奈川県版では、「赤ちゃん」というタイトルの、お産についての連載を精力的に行い、緊急時で無くてもお産の環境は厳しいことを報じている。07年5月19日には、横須賀市では常勤医が減少した結果、お産を扱わない病院が相次いでいる実態を紹介。また、松田町の病院では、医師が足らなくなった結果、お産をするために「抽選」が必要で、選にもれた妊婦は他の場所でお産場所を探さないといけない、という事態になっているという。
横須賀市のケースでは、横浜に妊婦が「流入」するケースが相次いでいるといい、その結果、横浜で妊婦が「あふれる」危険性も指摘されている。
いずれの問題も「産科医がどうすれば増えるか」という処方箋がない限りは、解決への糸口は見えてこない。