時事用語辞典として有名なのは「現代用語の基礎知識」「imidas(イミダス)」「知恵蔵」の3つだが、このうち2つが、紙媒体での発行を取りやめる。部数の大幅減がその理由で、両者ともウェブ版に活路を見いだしたい考えだ。
2社とも「今後はウェブ版(有料)を充実させる」
休刊が決まった「知恵蔵」(左)と「イミダス」(右)
2006年11月発売の「2007年版」をもって休刊するのは、「イミダス」(集英社)と「知恵蔵」(朝日新聞社)。
時事用語辞典の分野は、1948年創刊の「現代用語の基礎知識」(自由国民社)が独占してきたが、1986年、これに対抗する形で「イミダス」が創刊された。図や表を多く盛り込んだのが特徴。創刊号は113万8,000部が売れたが、最新刊では14万5,000部まで落ち込んでいた。
一方の「知恵蔵」は、1989年の創刊。新聞社という強みから、ニュース性を生かした誌面が売りだった。創刊号は95万分を売り上げたが、こちらも最新刊は13万部まで落ち込んだ。両者とも、休刊の理由は部数減。ウェブ上で簡単に情報が検索できる時代になったことが影響した。両社とも、
「創刊された時は、家庭にPCがある時代ではありませんでしたし、時代の流れで部数が減少したものと受け止めています」(集英社広報室)
「紙媒体としては役割を終えたと判断しています」 (朝日新聞社広報部)
と、同様の受け止め方をしている。なお、集英社は、トレンドを読み解くための解説本「イミダススペシャル 時事・トレンド通信(仮)」を07年11月に発行する。サイズは、これまでのイミダスよりも、ぐっと小さくなり、B5版で192ページだ。
両社は、今後はウェブ版(有料データベース)を充実させたい、としており、
「PC版は99年から、ケータイ版は00年にサービスを開始しており、これまでのデータの蓄積があり好評です。『毎日更新』が売りです。収録範囲を充実させていきます」(集英社)
「収録されている用語の数を増やすなど、これまで以上にコンテンツを増強します」(朝日新聞社)
と話している。
「現代用語」は「『休刊』は考えたこともない」
一方「現代用語の基礎知識」だが、08年版はこれまでどおり発行され、自由国民社が選定している「ユーキャン新語流行語大賞」の発表・授賞式とあわせて、07年12月3日の発売予定だ。
もっとも、「現代用語の基礎知識」の発行部数は12万部で、創刊時の10分の1程度だ。 だが、清水均編集長は「『部数が落ち込んでいる』という認識は、少し事実に反する」とのコメントをJ-CASTニュースに寄せた。
「パソコンやTVのなかった昭和20年代といまの時代とを単純に部数だけ比較して『落ち込んでいる』と認識していません。むしろ13万、14万と発行しながらも休刊しなければならない他社の本のつくり方に対して、弊社は『適正な本づくり』を心がけて来ました。『休刊』は検討どころか議論にのぼったこともありません」
さらに、2誌の休刊で事実上独占状態に戻ったことについては、
「もちろん部数は多いほうがいいと思います。が、この20年、競合誌に翻弄されましたが、ライバルを失って感じることは、老舗はただ愚直に創刊の志を確認しながら、コツコツ行くしかないのだろうな、というところです」
と、老舗としてのプライドをのぞかせた。