「ノキ弁」はかなりの部分が歩合給の世界
日弁連では、07年初めごろは、最悪500人が就職できないと予想していた。そこで、2月に、1人事務所を中心にパンフレットを配布して、「事務所内独立採算弁護士」の情報を提供していた。その結果、現在では年初時点から見れば、状況はかなり改善されたという。日弁連の弁護士業務総合推進センターの秋山清人副本部長は、J-CASTニュースの取材に対し、「各事務所では毎月固定給を支払うのはつらいが、独立採算弁護士ならいいという声がある。司法修習生は、いきなり一人で事務所を始めるのは不安があり、経験を積みたいという希望が生かせる」とその意義を強調する。
独立採算弁護士、通称「ノキ弁」は、事務所で机、パソコンなどをあてがわれるが、かなりの部分が歩合給の世界だ。先輩弁護士の事務所に居候し、給料をもらいながら勉強する従来の「イソ弁」とは性格が異なる。「ノキ弁」になったら、独力で仕事を取りながら勉強しなければならない。
そして、予想されるのが弁護士の競争激化だ。これに対し、ミクシィの日記には、それがもたらす結果について、楽観と悲観の両方の見方が出ている。弁護士費用が安くなる効果、夜間・休日サービスの充実、敗訴の場合の費用一部返還などの実現を期待する声の一方で、「『貧すれば鈍す』というように、これからは悪徳弁護士がたくさん出てくる」との指摘があるのだ。
07年は、日弁連の呼びかけに応じ、前倒しで採用した事務所が多く、翌年以降の就職活動はさらに厳しくなるとみられている。弁護士白書によると、06年で2万2000人だった弁護士数は、10年後には、倍以上の4万7000人に。さらに、30年後には、4倍以上の9万5000人を越えると予想され、供給過剰が心配されている。
「ノキ弁」の問題に詳しい兵庫・芦屋西宮市民法律事務所の津久井進弁護士は「弁護士の増加でサービス向上が期待できる半面、その弊害を心配する司法関係者は多い。すべての弁護士がそうではないが、いずれ格差社会の敗者のようなケースも出てくると思います」と話している。