金や銅、原料石炭など豊富な地下資源にらむ
こうした世論の変化を背景にしてか、日本相撲協会の北の湖理事長は8月23日、「環境を変えることも大事。医師の決定には従う」と、朝青龍のモンゴル帰国に柔軟姿勢を示した。直前の21日には、相撲診療所の吉田博之所長が、北の湖・相撲協会理事長と会談し、北の湖理事長から「すぐにモンゴルで帰国治療では周りが納得しない」と指摘され、国内で一度、通院治療ができないか検討するよう求められたことを明らかにしていた。朝青龍が治療外出したのは、翌22日だ。根強く厳しい世論に配慮しながらも、かなり世論が「軟化」しつつある状況も踏まえ、朝青龍のモンゴル帰国へ向け地ならしをしているようにも見える。
世論の「軟化」を後押ししているのは、朝青龍への同情論だけでなく、日経社説が指摘したように、日本とモンゴルの外交関係の懸念材料に発展し兼ねないという危機感も透けて見える。06年夏には小泉純一郎首相(当時)がモンゴルを訪れ、地下資源開発への投資協力を表明するなど、両国は結びつきを強めている。地下資源とは、豊富な金や銅、製鉄作業に必要な原料石炭などだ。日本企業が関心を寄せている。07年2月にはエンフバヤル大統領が来日し、経済や文化の交流を進める行動計画に安倍晋三首相とともに署名した。
大相撲とモンゴルの地下資源を巡っては07年7月末、元暴力団幹部ら3人が、元小結で06年に引退したモンゴル出身の旭鷲山を恐喝未遂した疑いで警視庁に逮捕された。旭鷲山が関係するモンゴルの金山採掘権の購入を巡るトラブルが原因とされた。