「嘘を嘘で塗り固めているようなもの」
一方、ウィキペディアを本人が編集するだけでなく、積極的に批判する人物も現われた。元アスキー社長の西和彦さんは、西さん本人に関する記述を大量に削除し、さらに06年11月には本人だと名乗って「この記事は独断と偏見の固まりです」などとする書き込みをした。この書き込み対し、「都合が悪いからといって、恣意的に編集することも(略)中立的観点からの記述とは言えません」などと批判が寄せられ、激しい議論が続いた。西さんは、11月30日にJ-CASTニュースが報じたインタビューの中で「日本のウィキペディアはカット、コピーペーストしているだけ。嘘で嘘を塗り固めているようなものです」と言い切っている。
ウィキペディアで「ウィキペディア」と「同日本語版」を調べると、日本語版は07年8月現在40万件以上の記事がある。何分冊もの本の百科事典の項目数を大きくしのぐ数だ。日本語版利用者は、06年3月に700万人に達している。01年に米国で始まり、日本語版も01年中に発足した。日本語版の知名度が上がったのは03年からだ。「誰もが自由に参加できるため、情報の精度・信憑性は必ずしも保証されるものではない」と「自己評価」もしている。
一方でウィキペディアの可能性を示す例として、よく引き合いに出されるのは、05年に英科学雑誌ネイチャーが、ウィキペディアと「老舗」のブリタニカ百科事典の項目を数十項目抜き取りで比較調査したところ、誤りや誤解をうむ表現の件数はあまり変わらなかったという話だ。さらに、間違いが発見されれば、ウィキペディアなら誰かがほどなく修正するが、本の事典は次回の改訂まで間違いが放置されるという指摘もある。
ウィキペディアの創設者で07年春に来日したジミー・ウェールズさんは、3月17日付け朝日新聞朝刊で「あくまでも情報のとっかかり。それが賢い使い方じゃないかな」と答えている。