低価格5,000円地デジチューナー 本当に登場するのか

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   2011年7月のアナログ放送の打ち切りと、地上デジタル放送への完全移行まで、あと4年と迫った。総務省が07年8月にまとめた移行計画では、アナログ停波以後も、アナログテレビでデジタル放送が視聴できるように、機能を絞り込んだ安価なチューナーが「2年以内に5000円以下で」手に入る環境を整える方針を盛り込んだ。デジタル化でテレビが見られなくなる人をゼロにするための施策で、メーカーに開発を要請する。ただ、現在、地デジチューナーは最も安い機種でも2万円前後で、需要もそれほど大きくないため、業界からは「国の補助がなければ、現状では難しい」との声も出ている。

支援するのは、生活保護世帯などのみ

   総務省が「5,000円チューナー」の開発を求めるのは、アナログ停波までに、アナログテレビが一気にデジタルテレビに切り替わるのは難しいとみているからだ。

   電子情報産業技術協会(JEITA)によると、カラーテレビ出荷台数のうち、デジタルテレビの割合が6月には90%を超えた。家電量販店の取り扱いも、ほとんどは、デジタルテレビになっている。だが、家庭では、アナログテレビは依然、使われている。残存数の正確なデータはないが、JEITAは「03年に1億台残っていると言われており、現在でも5,000~6,000万台あるのでは」と推測する。

   同省は、アナログ停波の3カ月前の11年4月に、地上デジタル放送受信機の世帯普及率100%を目指している。この普及率には、デジタルテレビだけでなく、チューナーとアナログテレビによるデジタル放送の視聴も含まれているが、07年3月の普及率は27.8%と3割未満にとどまる。05年(8.5%)、06年(15.3%)からは増加しており、同省は「このままいけば目標は達成できる」としているが、11年4月の段階で、普及率が目標を大きく下回れば、アナログ停波延期の議論が起こるのは必至だ。

   チューナーを使えば、アナログテレビでもデジタル放送は視聴できるが、ハイビジョンやデータ放送など、デジタル放送の利点は十分にいかせない。

   チューナー普及に関して、総務省は、アナログ停波でテレビが視聴できなくなる人がでてこないことを最優先したかたちだが、業界には「アナログテレビが残り、本格的なデジタル化移行への妨げとなるのでは」(JEITA)と懸念する声もある。

   ただ、同省がチューナー購入などで支援するのは、新たにテレビを購入することが経済的に難しい生活保護世帯などのみ。それ以外の世帯は、自腹で何らかの地デジ受信機を買わなければならない。「5,000円チューナー」は、ハイビジョン、データ放送などデジタル放送の利点に、それほど魅力を感じず、「当面はアナログテレビでもいい」と考えるような消費者の購入を想定したものだ。ただ、このような消費者が、簡易型チューナーを選ぶか、どうかは、はっきりしない。チューナー内蔵のデジタル録画機や、安価な小型液晶デジタルテレビを選ぶ可能性もあり、需要がはっきりしない。

「現状では5,000円以下は難しい」とメーカー側

   また、地デジチューナーの毎月の出荷台数は7,000~9,000台程度。07年6月までの累計出荷台数は34万2,000台で、デジタルテレビ(1,398万5,000台)の40分の1以下。数量が出なければ、量産効果で価格を安くすることも難しい。

   06年8月、国内で初めて地デジ対応の簡易型チューナーを発売した「ユニデン」(東京都中央区)は「機械を安く作っても特許料の問題もある」と指摘。また、07年7月に、業界最小・最軽量のデジタルチューナーを発表した「マスプロ電工」(愛知県日進市)は「テレビ番組表、データ通信など、かなりの機能を削って2万円程度にした」と話す。ともに「現状では5,000円以下は難しい」との考えだ。

   ただ、アナログ停波を2年後の09年に控えた米国では、60ドル(約7,000円)程度のデジタル受信機が登場しており、日本でも、アナログ停波が近づけば、価格競争を仕掛けるメーカーがあってもおかしくはない。停波直前の「駆け込み需要」を含む、消費者の動向の把握がカギになりそうだ。

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