松下電器産業が2007年9月に発売する薄型テレビ「VIERA(ビエラ)」シリーズの新商品に、37型の液晶テレビを加える。「37型以上の大型機種はプラズマで」と、液晶と線引きして主力のプラズマを展開してきた松下が、初めて37型の液晶を投入する。急速に大型化したライバルメーカーの液晶テレビに押されて激戦になっている売れ筋の37型を液晶テレビに明け渡した形だが、「背に腹は代えられぬ、ということだろう」(業界関係者)。08年北京オリンピックまであと1年を切り、最大の商戦に突入する年末以降、「プラズマvs液晶」の戦いは一層し烈となりそうだ。
大画面市場に液晶テレビがじわじわ食い込んでいる
これまで、松下は主力のプラズマを展開してきた
松下の西口史郎・パナソニックマーケティング本部長は8月9日のビエラの発表会で「薄型テレビは来年の北京五輪や2011年のアナログ放送終了に向けてますます勢いが出てくる。大画面は特に需要が高まっていて、市場は42型以上にシフトしている」と語り、プラズマの主要ポジションを42型以上に引き上げる一方で、プラズマと液晶との「境界線」があいまいになってきた37型には高精細なフルハイビジョン規格(HD)に対応した液晶テレビを投入するという。これは明確な戦略転換の表明だ。
電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた07年上半期(1~6月)の国内出荷実績では、液晶テレビは37型以上が前年同期比86.8%増の68万5000台と大幅に伸びた。1~3月は同2倍以上の出荷を記録したほか、6月単月ではブラウン管も含めたテレビ全体の台数構成比で過去最高の82%を占めるなど、市場の中心となっている。一方のプラズマテレビも上半期に前32.9%増の39万5,000台を出荷したが、6月は44型以上で前年同月比10.3%減とマイナスを記録し、「独占」してきた大画面市場に液晶テレビがじわじわ食い込んでいることを裏付けた。
松下とシャープ、サムソンと組むソニーが三つ巴
東京都内の大型量販店の担当者も「06年夏の商戦では32型が売れ筋だったが、07年の春以降は40型前後がよく売れる」と話す。液晶テレビの大画面化で競争激化し、薄型テレビの価格はこの1年間で10万円近く下落、市場の主戦場はより大きなサイズに移っている。
販売価格下落の傾向は今後も続く見通しで、各社ともコストと販売の競争は避けられない状況だ。関係者は「国内勢では、プラズマをけん引してきた松下と液晶のシャープ、韓国のサムスンと組むソニーが三つ巴の戦い。この構図は今後も続くが、気の抜けない体力勝負の度合いが強まっていくのではないか」と予測する。
松下は今回発表の新商品で、フルHD規格の構成比をさらに高め、42型以上の高級機種へのシフトを促す。また、テレビとデジタル家電をつなぐ「ビエラにリンク」機能を強化し、テレビ向け映像配信「アクトビラ・ビデオ」でビデオ・オン・デマンドを楽しめたり、リビングの外ではテレビカメラ付きのドアフォンとテレビ画面を連動させたりと、付加価値の高さや豊富な品揃えをPR。プラズマテレビでは日立製作所やパイオニアを抑えて「独り勝ちの」の状況を作った松下も、商品の多様性で勝る「液晶優位」に傾きかねない市場に警戒感をにじませ、迫る決戦に向けてプラズマの存在感アップに懸命だ。