テロ対策特別措置法の賛否をめぐり、民主党の現代表と前代表の見解が割れている。小沢一郎代表は、米大使との会談の際に「我々の憲法解釈では、日本と直接的に関係ない地域で、米国あるいは他の国と作戦をすることはできない」と、延長に反対する意向を伝えたのに対し、前原誠司前代表はテレビ番組で「日本が抜けるのは国益に反する」と、逆の見解を示したのだ。民主党が一枚岩ではないことを露骨に示すエピソードだが、議員を評価するサイトを見ると、両者への評価は割れているようだ。
「洋上給油は現段階ではベスト」などと持論を披露
「みんなの政治」でも、前原発言への賛否は分かれている
同法は、米国などがアフガニスタンで行っている対テロ戦争を支援するため、海上自衛隊がインド洋で他国軍艦艇への給油などの後方支援を行うにあたっての根拠法となっている。2001年に成立し、数回の延長を経て、自衛隊の派遣期限が07年11月に迫っているため、秋の臨時国会ではその延長の是非が焦点になる見通し。
そんな中、小沢氏は07年8月8日、民主党本部でシーファー駐日米国大使と50分にわたって会談。大使は海上自衛隊の給油活動を「極めて重要な役割を果たしている。日本の治安のためにも重要」などと特措法の延長に理解を求めたが、小沢氏は
「米国は国際社会の合意を待たずにアフガン戦争を始めた。我々に憲法解釈では、日本に直接的に関係のない地域で、米国あるいは他の国々と作戦をすることはできない」
なとど、延長に反対した。
ところが、その4日後の8月12日朝には、前原誠司前代表から反対の意見が飛び出したのだ。前原氏はテレビ朝日の報道番組「サンデープロジェクト」に約30分間、世耕弘成・首相補佐官(広報担当)と討論する形式で出演。テロ特措法の延長について、田原総一朗氏が小沢氏の発言をフリップで紹介した後に
「ノーでいいの?」
と突っ込まれると、
「これから(党内で)議論しますから…」
としながらも、
「(支援から)抜けることは日本の国益に反する」
「特別措置法が良いのかということも含めて、恒久法の問題も含めて議論したい」
「何らかの形で(支援には)参加すべき。洋上給油は現段階ではベスト」
などと、次々に持論を披露。特措法延長に賛成するにとどまらず、「恒久法」という単語まで飛び出した。
「自民、民主両党の大連立」望む声も出る
これを受けて世耕氏は
「前原さんにはよく分かっていただいている。ただ、小沢さんが問答無用でノーだという姿勢を示されていることが心配だ」
と発言、半ば民主党内の不一致ぶりを皮肉って見せた形だ。
こんな状況に対して、ネット上では賛否両論分かれている。ヤフーが設置している政治情報サイト「みんなの政治」は、議員ごとに評価を付けられる仕組みになっているが、小沢氏に対しては、これまで447件の評価が寄せられ、
「この人は、良い意味でも悪い意味でも政策が一貫している」
「私は彼を評価しません。自衛隊の給油に反対していましたが、そもそも『国連活動』という名分のみにこだわって平和活動なんかできるのでしょうか??」
と、まっぷたつだ。5点満点で点数が付けられる仕組みだが、現時点での平均点は3.5点だ。
一方の前原氏には120件の評価が寄せられ、
「腐った自民党の象徴である小沢一郎にコロリと騙される短絡的な国民の空気に流されず、異なる意見を言う勇気には敬意を表したい」
「まあ、気持ちは分からなくないんだけど、それにしても若いねえ。そんなことだと永遠に政権は取れないよ」
などと、持論を正直に述べることの是非も分かれている。なお、前原氏の平均点は2.5点で、現時点では「小沢氏やや優勢」といったところだ。
そんな中、時事通信が8月3日から6日にかけて行った世論調査では、望ましい政権の枠組みとして、現行の自民・公明連立による連立政権の維持が望ましいと考える人は11.9%にとどまり、「自民、民主両党などの大連立」を挙げた人が27.5%で最も多かった。
このあたり、世論調査は両氏の発言前に行われたものとは言え、民主党内の「ねじれ現象」もあり、特別措置法についても自民と民主が何らかの形で妥協すべきだ、という方向が示されているのかもしれない。