中国本土の企業として初めて東京証券取引所1部に上場した「チャイナ・ボーチー(中国博奇)」が注目されている。2007年8月8日の上場初日には、終値で25万8,000円と公募価格16万円を大きく上回った。社長は32歳という若さ。一方で本社は「タックスヘイブン」で知られるケイマン諸島。いったいどんな会社なのか、日本事務所に聞いてみた。
アジア企業の上場を増やしたい東証の思惑と一致
日中英の3カ国語の「チャイナ・ボーチー」のHP
上場初日翌日の8月9日、全国紙朝刊各紙(東京紙面)は、大半はチャイナ・ボーチーの白雲峰(パイ・ユンフォン)社長(32)を東証内で撮影した写真を使い、初上場を経済面(日本経済新聞は企業総合面)で報じた。朝日新聞は、別立てで「ひと」欄で白社長を取り上げた。読売新聞は「中国での調達が難しい今後の成長資金を日本で求めたいチャイナ・ボーチーと、アジアを中心に外国企業の上場を増やしたい東証の思惑が一致した」と分析した。
Yahoo!(ヤフー)の「株のネタ帳」には8月6日の段階で「人気の環境関連+中国企業で期待しておりますが、12万株という多さはマイナスです」などと分析が載っていた。また、ヤフーのブログ検索で「チャイナ・ボーチー」と8月10日に入力すると、1,158件がヒットした。「注目度の推移」の折れ線グラフの表も画面に現われ、07年7月以前はほぼ「0」だったのが、7月に入ると小さな波を描き、8月になって大きな波を示している。
ブログの内容は、ほとんどは8月8日の「チャイナ・ボーチー」上場に関するもののようで、「初値がどうなるか、ドキドキ」「よく健闘した」「買っておいて大正解」などと、公募価格を上回る値をつけたことを喜ぶ声が並んでいる。mixi(ミクシィ)にも、8月8日以降に日記が寄せられ「社長が、32歳だって。うひょおぉおおぉぉぉ~」「おいらも(株)買ってます。まだブルブルしながら持ってます」と話題になっている。
「チャイナ・ボーチー」は、各新聞社に「中国本土」の「環境関連企業」、「排煙脱硫装置メーカー」などと紹介されている。しかし、ホームページを見ると、「チャイナ・ボーチー」の本社はケイマン諸島。環境関連事業をしている中国の会社の親会社に当たり、しかも間に何社か関係会社が介在した形になっている。どんな会社なのか、日本で何をするつもりなのかを「チャイナ・ボーチー」日本事務所(東京・千代田区)に聞いてみた。
排煙脱硫をする装置の設計や設置
「チャイナ・ボーチー」の宮永浩明副総裁(42)によると、「チャイナ・ボーチー・エンバイロメンタル・ソリューションズ・テクロノジー・ホールデングカンパニー・リミテッド」と長い社名で、設立は03年末。海外へ株式を上場するのに便利なように設置したもので、「本業」の「環境事業」を行うのは、グループの中核子会社で中国・北京が本社の「北京博奇電力科技有限公司」(02年6月設立)だ。
宮永さんの説明では、「博奇」を「ボーチー」と読み、「チャイナ・ボーチー」の名前に使用した。「博」は「広く勉強熱心」、「奇」は「テクノロジーを使って勝つ」という意味を込めている。白社長も宮永副総裁も両社の「同じ」役職を兼任している。
「北京博奇」は、中国国内の石炭火力発電所と環境保護に関する契約を結び、二酸化硫黄などの排煙脱硫をする装置の設計や設置をする会社で、社員は約350人だ。「日本でも環境保護事業に乗り出すのですか」と質問すると、宮永さんは「日本は技術的に成熟しており、日本への事業進出のつもりはありません」と答えた。日本事務所の仕事は、技術提携企業を探すことと、株式公開に伴うIR活動だ。当面2人程度で仕事を始め、「多くなっても10人ぐらいでしょうか」。海外への事業進出については今後、東南アジアやアフリカなどへの展開を考えているそうだ。
「中国国内では有名企業ですか」と質問すると、宮永さんは「業界関係者なら知っている名前です」と答えた。「一般市民は知っているでしょうか、日本ならソニーやトヨタが有名ですが」との問いには、「そこまで有名ではありません」。しかし、今回の日本上場で、業界外の人にも知名度は上がると見込んでいる。
本社がケイマン諸島にあることについても質問した。すると、宮永さんは「中国の法律的問題点などを検討してケイマン本社の形態を選んだが、あくまで本体は中国の北京博奇だ」
8月9日の「チャイナ・ボーチー」の終値は、24万2,000円で、前日比マイナス1万6,000円だった。