1年間で学校を30日以上欠席した「不登校」の生徒が5年ぶりに増えたことがわかった。原因としては「いじめられるならば学校に行かなくても良い」という考え方が広がった、という見方も唱えられている。ところが、1,000人あたりの不登校児童数を見てみると、最も多いところと少ないところでは、実に2倍の差があることがわかった。一体、何が起こっているのだろうか。
最も不登校率が少ない愛媛県の実に2倍以上
不登校率「全国一」のヒントは議会答弁にありそうだ
文部科学省が2007年8月9日に発表した「平成18年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、06年度の不登校小中学生は12万6,764人で、調査対象の1,079万人の1.1%を占める。これは前年比3.7%増で、増加に転じたのは01年度以来5年ぶりだ。
不登校のきっかけとしては、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」(15.6%)、「親子関係をめぐる問題」(9.3%)、「学業の不振」(7.9%)「(病気以外の)その他本人にかかわる問題」(31.2%)などが目立つ。ずばり「いじめ」も、3.2%だ。
この中で、興味深いのが、各県ごとに算出された「1,000人当たりの不登校児童生徒数」というデータだ。最も不登校の割合が少ないのが愛媛県(8.2)人で、宮崎県(8.3人)、秋田県(8.7人)と続く。逆にワースト3は、島根県(16.3人)、高知県(14.9人)、和歌山県(14.7人)だ。愛媛と島根では、実に2倍以上の差があることになる。さらに島根県は3年連続のワースト1だ。なにか特別な事情はあるのだろうか。
島根県教育委員会の義務教育課に、不登校率が全国の中でも高いことを指摘すると、
「そういう感じは特にありません。不登校と言っても、理由は色々ありますし…」
と、「ワースト1」の理由をはかりかねている様子だった。今後の対策としては、県内に配置されていた5人の「生徒指導専任主事」を12人に増員し、各校との情報交換を密にできるようにしたり、不登校児のサポート拠点を増やしたりすることなどが予定されているという。
頭痛や腹痛も、不登校扱い?
では、不登校率が最も低かった愛媛県の場合はどうか。同県義務教育課に、不登校への取り組みについて聞いてみたが、
「スクールカウンセラーを充実させたり、関係機関との連携を高めるなどの対策を行っています。さらに、現場の先生の支援を進めていくことも大切だと考えています」
とのことで、他県と『これは違う』といった点はない、という立場のようだ。
それでは、この「ダブルスコア」の理由は何なのだろうか。「ワースト1位」の島根県議会での答弁にヒントがありそうだ。06年11月には、自民党の議員から「不登校率全国1」の理由を質す声があがり、教育長が、このように答弁しているのだ。
「やや弁解めいた答弁となりますが、本県では、欠席理由が例えば頭痛や腹痛であっても、不登校が懸念される場合は『不登校』扱いで整理しており、本人の状況の把握に努め、適切な支援を行うよう各学校にお願いしているところであります。不登校児童生徒の出現率、これは全国一位となっておりますが、こうした認識の上に立って対処していることの結果でもあると考えております」
回りくどい答弁だが、「他県よりも『不登校』と解釈するまでのハードルを低く運用しているので、数値としては不登校率が高く出る」と解釈できないことはないが。