「延期なんて口が裂けてもいえない」
また、デジタルテレビの急速な買い替えが進めば1億台あるアナログテレビの廃棄が問題になる。「所管は経産省になる」(総務省)、「廃棄は総務省と環境省でやるのが筋」(経産省)というように役所のほうも及び腰になっている。
日本より早く地上デジタル放送の完全移行をめざしていた米国や韓国は受信機の普及が政府の思惑通り伸びずに延期した。しかし、日本では「延期」といおう言葉はタブーになっている。民放キー局幹部は「計画通り進めるだけ。延期なんて口が裂けてもいえない」と語る。
デジタルテレビの普及は月に100万台という現在の増加ペースのままでは2011年7月時点では7,000~8,000万台にとどまるのは自明の理。日本ではデジタル化が「国策」となったため、「2011年7月のデジタル完全移行」というタテマエ論が先行している。
3,000から4,000万台のアナログテレビが残る状態でのデジタル完全移行はあり得ない。視聴者も拙速な移行を望んでいない。そろそろ「普及がどの程度になったら完全移行する」というホンネの議論をすべきではないのか。