「公示後にはウェブサイトは更新しない」というのが、最近の選挙での「常識」。これで大丈夫だと思っていたら、今回は当選後に掲載された文言に、地元選管から「物言い」がついた。公職選挙法で禁じられている「選挙後のあいさつ行為」に該当する可能性がある、という理由だった。ところが東京では「ありがとうございます」という文言が「セーフ」。各地の選管によって対応はまちまちで、指摘を受けた側は困惑している。
公職選挙法は公示・告示後に「文書・図画」の配布を制限しており、ウェブサイトやメールも、これに含まれると解釈され、現在では、選挙期間中はウェブサイトの更新は行わないのが一般的だ。
今回は、選挙期間後のウェブサイト更新に「物言い」がついた。問題になったのは、参院選愛知選挙区から初当選した、民主党の谷岡郁子さん(53)のウェブサイト。ウェブサイトの管理を委託している業者からの提案を受けて、当選翌々日の2007年7月31日、
「今回の参議院選挙で当選させていただきました。『谷岡くにこ』力の限り頑張ります」
などとする文言をウェブサイトに掲載した。翌8月1日に、愛知県選挙管理委員会に、ウェブサイトを見た人から連絡があり、選管は民主党県連に「文言が公職選挙法に抵触する恐れがあるかもしれない」と伝えた。県連から連絡を受けた谷岡事務所では同日夕方に文言を削除した。
「当選しました」と書くだけでも危ない
谷岡さんのウェブサイトの更新予定は未定だそうだ
公職選挙法の178条には
「何人も、選挙の期日後において、当選又は落選に関し、選挙人にあいさつする目的をもつて次に掲げる行為(編注: 文書を配ったり掲示すること)をすることができない」
とあり、これに抵触する可能性がある、ということのようだ。
愛知県選管ではJ-CASTニュースに対して
「『公職選挙法では、選挙後の文書による挨拶行為を禁止していることはご存じですよね?』といった、『念押し』をさせていただいた、ということです。『指摘』というほどの強いものではありません」
と経緯を説明する。文言のどの部分が問題視されたのかという問いについては、
「細かい文言がどうこうということではなく、『あいさつをする目的』と解釈されれば、どんな文言でも抵触するおそれがある、ということです」
と話す。極端な話、「当選しました」とだけ書いてあっても、それが「あいさつ」だと見なされると、法律違反に問われる可能性がある、ということのようだ。
「ありがとうございます。みなさんのおかげです」がなぜセーフ
一方の谷岡事務所では、「あいさつ」ではなく「報告」のための文言だったという認識だったようで、
「『ありがとう』『御礼』といった文言がなかったので、大丈夫だと思っていたのですが…。正直、『あれっ??』という感じです。混乱、困惑しています」
と指摘は「まったくの想定外」との見方だ。それでも、「念のため、文言は削除した」とのことだ。
確かに、谷岡事務所が困惑するのも無理はない。東京選挙区(改選数5)で当選した5人のうち、丸川珠代さん以外の4人が当選後にウェブサイトを更新、当選の報告とともに、こんな文言が並んでいるのだ。
「『皆様が安心して暮らせるまっとうな 日本をつくりたい』と一貫してお訴えをさせて頂きましたが、このように大変多くの皆様にご共感頂き、ご支援頂いた事、大変嬉しく思うと同時に、またそのご期待の大きさに身の引き締まる思いです」(民主党・鈴木寛さん)
「ありがとうございます。みなさんのおかげです。動けば変わる!これからがスタートです。一緒にがんばりましょう」(無所属・川田龍平さん)
「1,087,743票の重みを感じながら、みなさまのご期待に応えたいと、意欲満々です」(民主党・大河原雅子さん)
「17日間にわたる選挙戦を戦い抜くことが出来たのも、ひとえに皆様の暖かいご支援・ご声援のおかげです」(公明党・山口那津男さん)
この4人のほうが違反の可能性が強そうだが、鈴木寛事務所では「特に選管からの指摘はいただいていません」と話している。少なくとも東京の選管による解釈は「セーフ」の模様だ。
東京の状況を谷岡事務所に伝えると、非常に驚いた様子。今後のウェブサイト更新予定については、
「今回の件があったので、慎重になっています。まだ詰め切れていない部分があって、現在は未定です。勉強させていただきながら、やっていきたいと思います」
と、情報発信に二の足を踏まざるを得ない様子だった。