1970年代に一世を風靡したピンク・レディーの曲などで知られる作詞家の阿久悠さん(享年70)が、尿管がんのため2007年8月1日に死去した。8月3日夜に複数のテレビ局が特集番組をするほか、発売中だった8,000円を超えるCDに注文が殺到するなど、大反響が出ている。
4万円のCDが即完売
名曲の数々を生み出した阿久悠さん(写真提供:「人間万葉歌」<ビクター>より、撮影:宍戸ヤスオ)
NHKは8月3日夜に追悼番組「ありがとう阿久悠さん~日本一のヒットメーカーが生んだ名曲たち~」を放送することを急遽決めた。22時から、阿久さんと名コンビを組んだ作曲家都倉俊一さん(59)がゲスト出演し、思い出を語る。90分の生放送で、追悼番組としては異例の長さという。
また、テレビ東京も3日22時から放送する「たけしの誰でもピカソ」の中で追悼コーナーを設け、貴重な映像を紹介する。
阿久さんは、1965年の広告会社退社後に放送作家となり、担当した音楽番組に出演していたザ・スパイダースに「モンキー・ダンス」の詩を提供したのがデビュー作だ。有名な作品は数知れないが、尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」や山本リンダさん「どうにもとまらない」、都はるみさん「北の宿から」、ピンク・レディー「UFO」、沢田研二「勝手にしやがれ」などなどだ。5,000曲以上ある。
阿久さんが作詞した曲を集めたCDにも、一気に注目が集った。108曲CD5枚組「人間万葉歌(まんよううた)阿久悠作詞集」(ビクターエンタテインメント)は、8,400円(税込み)の大作だ。ビクターの制作担当者によると、05年6月末に発売され、07年7月ごろまでに7,000枚以上を売り上げ、「8,000円以上もするCDとしてはかなり高い数字」だった。それが、訃報が報じられた1日のうちに電話注文が殺到し、在庫にあった160セットは「一瞬に」売れきれた。その後も注文が相次ぎ、8月3日昼現在で1,700セット以上の注文が寄せられた。8月10日前後には「何とか生産が追いつくよう調整中です」。
作詞家生活40年記念CDも発売する予定
さらに同社が出す阿久さんのCDは、約250曲を納めた14枚組で3万9,690円(税込み)という「移りゆく時代(とき) 唇に詩(うた)~阿久悠大全集~」という大作もある。1997年に発売され、通販ルートなどを主に使っていたため、知名度は低く在庫もあまり用意していなかったが、こちらも「1日のうちに注文が入り在庫切れです」という。
07年11月5日には、ビクターやコロムビアミュージックエンタテインメントなど5社が共同で阿久さんの作詞家生活40年を記念するCDを発売する予定だった。阿久さん自身が曲の解説を書くなどの準備を進めている最中だった。ビクターの担当者は「CDを出す方向で準備を続けたい」と話した。
個人的に何度も話したことがある、というこの担当者は「白い麻のスーツを着こなすなど、服装をはじめ、おしゃれでダンディな方でした」と思い出を語った。「考えに考えた上で詩をつくるこだわりの人でもありました」。追悼番組やCDの売れ行きについて質問すると「偉大な方だった、と改めて思い知りました」と話した。