日本航空(JAL)や全日空(ANA)が相次いでブルドッグなどの一部の犬種の国際線・国内線での輸送中止に踏み切った。暑さなど温度変化に弱く、死亡する例が相次いだためで、両社そろって「家族同然の大切なペットのため」という理由を挙げている。しかし、「愛犬家思い」とも思える措置に愛犬団体は「こうした犬種が少なくなってしまう」と困惑しているのだ。
「短頭犬種」は熱に非常に弱く、輸送で衰弱
「ブルドッグお断り」の航空会社が相次いでいる
JALは2007年7月20日から、フレンチブルドッグとブルドッグの国内・国際線の輸送を全面的に取りやめた。同社広報部によれば、これまでに同犬種について衰弱する事例が相次ぎ、なかには死亡する例もあったため、獣医師などの専門家のアドバイスに従い、航空機の輸送環境の影響をより受けやすいと判断したという。
ブルドッグなどは「短頭犬種」と呼ばれる犬種に属し、一般的に体温調整が苦手とされる。貨物室は一般的に客室とほぼ同程度の温度に設定されているが、ペットが貨物として航空機内に収容されると、貨物の出し入れの際などに貨物室の温度が上がるなど、温度の設定状況がやや不安定でペットは温度の変化を機内よりも受けやすい。ブルドッグなどの「短頭犬種」は熱に非常に弱く、衰弱してしまう可能性があるのだ。
一方、ANAも2007年7月23日、8月1日から9月30日までのあいだ、ブルドッグのほか、ボクサー、シーズー、スパニエル、チャウチャウ、パグ、チンなどの「短頭犬種」の国内線の輸送を取りやめると発表した。同社広報室によれば、以前からこの犬種の空輸の取り止めを検討していたが06年度に国内線で2件の犬が死亡した事例があり、取りやめることにした。同社はすでに07年5月18日から、国際線の同犬種の空輸を取りやめていた。
航空各社にとっては、愛犬家に敬遠されかねない策とも思われるが、両社はそろって、
「ペットは家族の一員のように大切な存在で、万が一のことがあればそちらの方が残念なこと」
と述べている。
さらに、これに引き続き、スカイマーク、エア・ドゥ、スターフライヤーも同様の理由でブルドッグを中心とした「短頭犬種」の取り止めを発表するなど、ブルドッグなどの「短頭犬種お断り」の航空会社が相次いでいる。
ネット上でも様々な議論が出る
一見、「愛犬家思い」とも思える航空会社の対応だが、愛犬家には大問題。一緒に飛行機で旅したいとはいえ、航空機内で愛犬が死んでしまうのも困る。インターネット上でも様々な議論になっているようで、
「だめなんですねー。ショックです!」
「困ることが色々出てくるだろうな。ブリーダーさんで、遠くへ飛行機を使ってワンコを送っていらっしゃる方を知っている」
「難しい問題ですが、いつの日か同席できるようになればな・・・と。真逆へ動いていきそうですが・・・」
「どんな理由であれ『絶対に一緒に連れて行かないといけない』理由なんてないのですから。。。」
と意見もさまざまだ。
日本社会福祉愛犬協会(KCジャパン)はJ-CASTニュースの取材に対し、
「空輸できないとなれば、ブリーダーがブルドッグなどを供給できなくなり、犬種が少なくなる可能性がある。(航空会社の空輸取り止めが理由で)こういった犬種を買わなくなってしまう人だっているでしょう。犬種によって不公平な目に遭うことになる。特定の犬種を乗せないということでなく、根本的なサービスの体制を考えてもらいたい」
と要望している。