控え室にあるテレビの前にボイスレコーダーが置いてある
自民党幹部が各局の中継でインタビューを受けていても、会場にいると番組のキャスターのどのような質問に答えているのかわからない。そもそも党幹部の発言さえも現場にいる記者にはほとんど聞こえないのである。そこで、頼りは控え室にあるテレビというわけだ。その前では記者たちが党幹部の発言を熱心にメモ書きしている。そして、テレビの前には「ぶらさがり」でもするように、ボイスレコーダーが置いてあるのである。なぜ彼らがここにいなくてはいけないのかはよくわからないのだ。
9時半を過ぎると会見場では今更ながら「当選確実」のバラ付けが行われ始め、拍手が起こった。しかし、党幹部は相変わらず沈痛な面持ちで座っている。
「民主党はいまごろ(みんな)笑ってるんだろうな」
「虎(片山虎之助参院幹事長)やばいよ」
しかし、このあたりから党本部は物々しい雰囲気になりはじめる。安倍首相が官邸を出たとの情報が入ったからだ。会見場の人口密度は最高潮になり、熱気がムンムンと漂う。首相を待ち受けるSPの首筋にも汗が光り、イヤホンについた汗をふき取る者もいる。記者は入り口で総理を待ちうけ、その複雑な表情を捉えると、また、テレビの置いてある控え室に駆け込んだ。安倍首相の発言をメモ書きするためだ。もちろんテレビの前にはボイスレコーダーが用意されている。
もっとも、大勢判明後の30日未明には、記者席が用意されている別の場所で幹事長の記者会見が行われるのだが。
安倍首相が到着した直後の会見場では、数少ない当選者のバラ付けが行われ、拍手に包まれた。歴史的な「大敗」を紛らわすかのように。