ゼロカロリー飲料は大丈夫か メタボの元凶という研究の真偽

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   ゼロカロリーの飲料が大人気だ。ただ、毎日飲み続けると、「カロリーゼロのソフトドリンクも普通のソフトドリンクと同じように健康上の危険につながる」という研究結果を紹介する記事が報道された。1日1缶以上飲む人は、メタボリックシンドロームのリスクが44%高く、普通のカロリーでもカロリーゼロでもリスクの変化は見られなかったという。本当なのか。

飲料メーカー関係者は「信じがたい」

「メタボリック」への関心は強い
「メタボリック」への関心は強い

   記事を伝えたのは、米総合情報サービス「ブルームバーグ」だ。2007年7月23日、英語のホームページのニュース欄で報じた。日本語翻訳版も7月24日に配信されている。記事によると、研究結果はボストン大学の研究者らがまとめた。ボストン郊外の住民のライフスタイルを何十年も観察し、うち6,000人以上について平均4年以上、ソフトドリンクの健康への影響を分析した。

   分析の結果は、ソーダ類を日常的に飲む人は、高血糖値や肥満などのメタボリックシンドロームの要素を悪化させることが分かった、としている。記事の中で、研究に携わった米ボストン大学の循環器学者、ラマチャンドラン・バサン氏は

「普通のソーダでもダイエットソーダでも違いはほとんどなかった」

と述べている。

    記事は反論も掲載しており、米国の飲料関係団体の幹部が

「この研究は、普通のソフトドリンクについてもダイエットソフトドリンクについても、何ら心臓病の危険が上昇することを証明していない」

としている。また、飲料メーカー関係者の「信じがたい」という声も伝えている。

   もっとも

「研究者自身も、カロリーがないダイエットドリンクが健康リスクを上昇させることに驚いている」

とも伝えている。「ダイエットドリンクについては将来的に調査が必要だ」「普通のものとダイエットタイプのものとに違いがないという結果には困惑している」という「弱気」の分析が書かれており、どうもすっきりしない。

   そもそも「カロリーゼロ」は文字通り「ゼロ」なのか。厚生労働省に聞くと、日本では、100ミリリットルあたり5キロカロリー未満であれば「カロリーゼロ」「ノンカロリー」という表示が認められる。健康増進法に基づく「栄養表示基準」で定められている。国連も作成に関係した世界的な基準に従っており、「世界標準と考えていい」そうだ。

「普通に考えるとおかしい結果ですね」

   ある通常タイプの炭酸飲料のカロリーを見ると、100ミリリットル当たり45キロカロリーだった。500ミリリットル入りペットボトル1本を飲むと225キロカロリーだ。「カロリーゼロ」なら単純計算で最大1本25キロカロリー未満で、普通タイプの約10分の1以下だ。とても少ないと見るのか、「ゼロではない」という点を気にするべきなのか。

   「図解でよくわかるメタボリックシンドローム」(保健同人社)の著書もある、東京慈恵会医大付属病院の新橋検診センターの和田高士所長に聞いてみた。ブルームバーグの記事に掲載された研究については、

「聞いたことがないし、日本で同様の結果が出たような研究も知らない」

と話した。一般的にはあり得る話でしょうか、と質問すると

「普通に考えるとおかしい結果ですね」

と話した。カロリーがゼロかゼロに近ければ、それ自体が肥満などメタボリックシンドロームに直接影響することはない、というのだ。

   関係が出てくるとすれば、ある飲料を飲む人は、食事を多く取る傾向があるとか、運動をしない傾向にあるとか、いずれにせよ、間接的な関連はあり得ても直接的な影響は「まず考えられない」という。

   ほかに考える必要があるのは、飲料に含まれている成分が、カロリーとは無関係に、食欲を増す作用があったり、脂肪分解を妨げる作用があったりした場合だ。しかし、少なくとも記事上ではそうした研究結果は触れておらず、

「少なくとも記事の範囲では、おかしい結果だ。どういう実験をしたのかも詳細が分からない」

と懐疑的だ。

   また、全国清涼飲料工業会(東京)に、J-CASTニュースが取材すると

「(日本語訳版の)記事を読んだだけでは何ともコメントしようがない」

と担当者が話した。

   もっとも、ネット上のQ&Aサイトでは、「カロリーゼロ飲料って何」「いくら飲んでも肥満を気にしなくてもいいの?」など素朴な疑問が多数寄せられている。回答者によって肯定的なもの、否定的なもの、と答えは様々だ。J-CASTニュースが取材した、厚生労働省食品安全部のある職員からは

「最近、妙にゼロカロリー飲料に関する質問が多いんですよね。そんなに流行ってるんですか」

と逆に質問された。関心が高まっていることは間違いなさそうだ。

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