NHKが受信料制度を設けて以来、初めての値下げ案を打ち出した。もっとも中味は月額50円から100円という小幅なもので、2割程度の値下げを強く求めてきた菅総務相とNHKの対立は深まりそうだ。
当初案は、口座振替やカード払いに限っての値下げ
受信料値下げをめぐって総務相とNHKの対立は深まりそう
受信料の値下げ案は07年7月24日のNHK経営委員会で示された。当初案では一律値下げでなく、口座振替やクレジットカード払いの契約者に限っての限定値下げを考えていた。一律値下げでは受信料収入への影響が大きいという理由だった。
ところが、NHKがこの口座振替などの契約者に限っての値下げを24日にリークしたが、これに自民党の郵政族や総務省が反発した。「2割程度の一律の値下げを要望しているのに口座振替だけの一部値下げなんて論外だ」という声が巻き起こった。
菅総務相も「根回しもせずマスコミにリークするなんてバカにした話だ」と怒り心頭だった。こうした話が伝わり、NHKは「一律値下げにしないと収まりそうもない」と方向転換。どたん場で小幅な一律値下げとなった。
NHK受信料をめぐっては、これまで菅総務相とNHKが激しく火花を散してきた。職員の相次ぐ不祥事で受信料不払いが増加するなか、菅総務相は07年1月、「受信料支払いの義務化」と「2割程度の受信料値下げ」をセットでNHKに求めた。
総務省の試算では、受信料を義務化すれば5年後には徴収率が現在の70%から80~85%に増え、年間750~1,200億円の増収になる。その分が値下げに回せるという理屈だった。
これに対し、橋本NHK会長は「値下げが経営に与える影響が不明である」として拒否、「9月までに値下げを視野に入れた受信料制度の見直しをまとめたい」と引き伸ばし作戦に打って出た。
「NHKが9月までと区切ったのは、NHKの政治部が『参院選は自民党が敗北、安倍政権は退陣、菅総務相の交代もある』と分析、とりあえず値下げを引き伸ばせば事態も変わると判断した」(NHK担当記者)
100円、200円では通らない
このNHKの不誠実な対応に菅総務相の怒りは収まらなかった。さらに、「NHK幹部会で菅氏のことを『市議上がり(菅氏は横浜市議出身)』と言ったという話があり、これが菅氏の怒りに油を注いだ」(同)
今回の小幅な値下げについても菅総務相は「漏れ聞いていることでは、国民の皆さんは納得しないと思う」と猛反発。総務省幹部も「こんな値下げ案では到底、容認できない」と足並みを揃えた。
古森NHK経営委員長でさえ「100円、200円という値下げが視聴者の切実な願いだとは思えない」と小幅な値下げ案に疑問を投げかけている。NHKは、こうした「バナナの叩き売り」のような姑息な値下げに固執する必要はない。