J-CASTニュースがスタートして07年7月末で1年になる。ご愛顧、ありがとうございます。
Webは既成のメディアとは異なる恐るべきパワーを持っていることを知らされた1年でした。伝達と拡散するスピード、許容するコンテンツの幅、データベース機能によるコンテンツの寿命・ロングテールなど、既成メディアに比較して驚異的といってよい。このパワーは当然、社会に対してマイナスの方向にも働くので、編集という制御が必要だが、Webの機能や特性を殺さずに実現するのは至難で、まだ、50点にも届かないと思っている。
ページビューは07年6月に1000万PVを超した。前月比で5%から20%ぐらいの伸びが続き、今も伸びは衰えない。Livedoorやexciteなどのポータルサイトにも記事を提供しており、これらの閲読を含めるとすでに月間2,000万PVを超す。
コメントが記事を補足、成長させる
新聞や雑誌が短期間で部数を倍増させるなどということは現実にありえない。テレビの視聴率も同じ。2倍、3倍なんて奇跡だ。それが、Webの世界では現実にあり得る。
拡散を後押しするひとつの要素は記事に送られてくるコメントだと思う。私は掲載されるほとんどのコメントに目を通しているが、パターンをいくつかに分けることが出来る。
記事に対する意見、反論、補足に、きわめて専門的な情報を持つ人からのコメントがある。自動車関連の記事に必ず寄せられる「玄人」氏のような専門的な情報は、記事の修正、補足として貴重だ。記事はコメントを加えられてコンテンツとして成長・完成していく。
記事本体から離れて成長していくコメントコンテンツもある。コメンテーター同士で議論、掛け合い、これが独立したコンテンツの魅力を持つ。メディア論、国際関係、政治批判などで出色のコメントを読み、うなったことしばしばである。
言葉の遊びを生かした交流が見事な流れを作っているものもある。連歌のように集団詩、コピーの趣だ。短いコメントで連なるが、絶妙なタイミングで差し込んでくる。前後のコメントと響き合う。ほぼ、リアルタイムで書き込めるというWebメディアの機能が発揮されている。ハンドルネームを使う人が増えてきた。
オールド手法にメディア力がある
J-CASTニュースの記事はすべて、社内またはネットワークの記者、ライターによって書くオリジナル原稿である。まだ、取材費も使えないし、原稿料も十分には払えない。でも、手作りに拘っている。
Web2.0という言い方は、いかにも先進的メディアのイメージだが、J-CASTの制作手法はWeb0.5のオールドスタイルでも、手作りに拘っている。コメントを送ってくれる人たちも手作り。両者が合わさるとWeb2.0以上のメディア力を発揮できると考えている。
コメントに時々、「ちゃんと取材しろ」「報道機関として恥ずかしいぞ」「こんな芸能ネタは載せるな」などとお叱りや、注文を受ける。まだまだ報道機関などという立派なものではないし、既成の報道機関を目指しているわけでもない。私自身は、人間の好奇心に上下はない、その雑多さに価値があると思っている。
発行人(株式会社ジェイ・キャスト 代表取締役)
蜷川真夫