「長谷川洋三の産業ウォッチ」
原発事故:東電勝俣社長の正念場

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「タフでなければ生きていけない。やさしくなければ生きている資格がない。平岩外四さんが好きなこの言葉は、私にとっても常に心に留めたい言葉だった」

   2007年7月23日、東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪で営まれた平岩外四元経団連会長(元東京電力会長)のお別れの会の弔辞で、東京電力の勝俣恒久社長はこう強調した。東京電力は16日の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原子力発電所内部の変圧器で火災が発生し、放射能を含む水が漏れ出すなど被害が出ており、東電は緊急対応の舵取りが求められている。
   それだけに私はお別れ会のあと「今の勝俣社長にとってこの言葉はひときわ意味が大きいですね」と語りかけると、「きちっと報告はあげている」と答えた。

   柏崎刈羽原発は1-7号機の原子炉があり、発電能力は合計で約800万キロワットと大きい。中越沖地震では最大で680ガル(ガルは地震の揺れを示す加速度)という設計上の想定(270ガル)を大幅に上回る揺れを記録し、緊急停止。政府も耐震調査を含めて安全性を完全に確認できるまで運転再開を認めない方向で、再開には少なくとも1年程度かかる見通しとあって、休止中の火力発電を再稼動させたり、他の電力会社から電力融通を受けるなど、対応におおわらわだ。経営者として一段の踏ん張りが必要で、タフさが求められている。
   藤沢周平など時代小説が好きだった平岩さんは、やはり時代小説が好きな勝俣社長に「気分転換も必要だよ」と時々本をくれたそうだが、ゆっくり眠れる心境ではとてもないだろう。

「人間の努力も自然の摂理からはみ出すことはできない」(部隊の117人しか帰還しなかった過酷なニューギニア戦線での体験から)
「私心がなく、心がさわやかになった時が決断のタイミング」(迷った状態が続いた後自然に考えが固まってくるような感じを言い表して)

   数々の平岩語録を残した大先輩に学ぶことは多そうだ。


【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、帝京大学教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「クリーンカー・ウォーズ」(中央公論新社)「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。


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