2007年7月29日投票の参議院選挙の話題が、インターネット上で連日取り上げられている。公選法上は、7月12日の公示以降はネットでの選挙活動は禁じられているが、連日幹部の演説を紹介する党もあれば、「応援」を書き込む個人ブログもある。どこまでが「セーフ」なのか。
「政治活動なので問題ない」のか
法律違反のない選挙を呼びかける財団法人「明るい選挙推進協会」のホームページ
総務省選挙課によると、法律では、パソコンに表示された文字や画像は、選挙期間中に配布を禁じている「文書図画」にあたる。配布していいのは、一定の法定ビラとはがきだけだ。ネット利用の選挙活動は、慎重姿勢とされた与党内でも07年参院選からの解禁に向けた調整が進んだが、結局見送られた。誹謗中傷などへの懸念が少なくなかったためだ。
「参院選が公示された12日、中川秀直幹事長は大阪・梅田で街頭演説を行った」。自民党HPが7月12日に中川幹事長の写真つきで更新した内容だ。J-CASTニュースの取材に対し、自民党広報関係者は「(法律で禁じられている)選挙活動ではなく、政治活動なので問題ない」と説明した。選挙活動にならないよう、参院選の候補者名や写真が入らない工夫をしているそうだ。04年の参議院選でも「同様の更新をしていた」。7月12日のHPの締めくくりは「『(民主党が勝利すれば=原文通り=)もっとひどい時代がきてしまう。(略)』と声を張り上げた」だった。
民主党も公示後にHPを更新している。更新内容には、動画も含まれている。民主党広報委員会も「政治活動なので違法ではない」という認識だ。HPでは、7月19日に鳩山由紀夫幹事長が沖縄県で行った演説を写真付きで紹介している。「鳩山幹事長は(略)『利権を求める政権与党ではなく、クリーンな政治を実現する民主党を』と訴えると、会場に集まった(略)」。民主広報も「前回(04年)参院選でも同様の更新は行っていた」という。
公明、共産両党も「機関紙」を転載する形で更新をしている。社民党は7月20日昼現在、公示日後の更新をしていないが、党宣伝委員会によると、人繰りや技術的な問題のために更新が遅れているだけで、当初から更新予定で、近く実施する。
法律違反かどうかの分かれ目、選挙活動か政治活動かは、明確な線引きはない。05年秋の衆院選では、民主党の公示日当日のHP更新内容が「問題あり」とされ、総務省が「法解釈を改めてご説明した」(選挙課)ため、民主は以降の更新を見送った。問題点を指摘した自民党も同様に更新をしなかった。ネットと選挙を巡っては、07年春の東京都知事選でも話題になった。ある候補の政見放送が投稿された動画サイト「ユーチューブ」に対し、都選管が削除要請をした。
こうした問題点を整理しないままにHP更新するのは「認められない」と批判するのは、新党日本だ。公示日以降のHP更新はなく、遊説日程を紹介する支援者のサイトについても、クリックでは移ることができないようにした上で、アドレスを紹介するに止まっている。
平山誠総務局長によると、選挙活動と政治活動の線引きがあいまいなのは総務省も認めており、違法性を排除できない。以前の選挙でもHPを更新せずに選挙をした候補者や政党があり、法改正前にHP更新を推し進めるのは「公平ではない」と、更新する他党と総務省を批判した。「ネット選挙」自体は法改正して認めるべきだとしており、規制している現状は「時代錯誤だ」という。
「個別に判断するのは警察の仕事になる」
もっとも、別のある党関係者は、新党日本の主張について、党の「顔」、田中康夫・前長野県知事が今回の参院選候補者であることを挙げ「更新しようにも、もろに選挙活動になるのでできないだけでしょ」と冷たい反応を示した。
結局、今回の各党のHP更新は問題ないのだろうか、とJ-CASTニュースが総務省選挙課に聞くと「個別に判断するのは警察の仕事になります」と答えた。省としては、一般的な解釈を示すだけだ。担当者によると「当選を得る目的を持って」活動すれば、違法領域の選挙活動になるという。しかし、肝心な政治活動との線引きは「はっきりしていません。グレーです」。また、「実は何でもあり」ではないのか、と質問すると「文言だけでなく、回数や状況など総合的に判断され、違法性が問われる場合があります」と答えた。
違法性が問われるのは、選挙関係者だけなのか、と確認すると「一般個人も対象だ」という。個人ブログには気軽に候補の応援コメントが書かれている。東京選挙区に立候補している複数の話題候補について見てみると、公示日以降も「○○さん(編集注:本文は実名)に握手された。(略)応援することに決定」(7月19日)、「○○が立候補しています。演説会があります。私も応援します」(7月16日)などと気軽に書き込まれている。以上のような例を挙げて選挙課に「この程度なら問題ないですか」と質問すると、「微妙です」という回答。「摘発されるかどうかはともかく、法律的には違反の可能性があります」。「ネット選挙」がセーフかアウトかの線引きは難しそうだ。
ちなみにこの複数の候補者のHPを見ると、公示日以降の更新は凍結されていた。