「米国政府のご機嫌を取ったわけではあるまいが」
毎日新聞の同7月2日朝刊社説は「本来なら進退を問われる発言だ」とし、「首相自らが発言の真意をただし、厳しく叱責すべきである」と論じた。見出しは「何と軽率で不見識な発言か」。厳しい言葉が続き、「(被爆者の気持ちについて)そのことに対する想像力が及ばない政治家は失格だ」、「(イラク戦争に関する過去の発言などに触れ)さらに今回の発言とあっては閣僚としての資質が疑われても仕方あるまい」などと批判している。
朝日新聞も同2日朝刊の社説で「思慮のなさにあきれる」として久間氏発言を批判したが、罷免・辞職問題については直接的には触れていない。「しょうがない」発言自体については「無神経さには、あいた口がふさがらない」「歴史の忘却、米国の原爆正当化への追随でしかない」と非難している。締めくくりでは「印象や説明の仕方の話ではない。(久間氏の)認識そのものが問題なのである」と述べるに止まっている。
発言に対しては批判しながらも矛先を米国側へ向けたのは産経新聞の7月2日朝刊のコラム「産経抄」だ。イラク戦争を巡る発言で「日米の同盟関係に波風を立てた」と指摘した上で「まさか、その埋め合わせとして、米国政府のご機嫌を取ったわけではあるまいが」と皮肉を述べている。また久間氏が記者に弁明した内容に触れ「本当に『しょうがない』人ではあるが」とも批判している。しかし、「いわゆる原爆投下容認論者ではないらしい」として、「日本はアジアに謝罪する必要がある。原爆は仕方なかった」という「容認論者」を暗に批判している。その上で、ロンドン大学の歴史学者への取材経験に触れながら「(学者は否定したが)原爆投下の背景には、やはり人種差別思想があったのではないか、と」と疑問を投げかけている。
また、久間氏の地元では、長崎原爆被災者協議会など5被爆者団体が7月1日、久間氏に対し長崎市である平和祈念式典出席を控えることなどを求める抗議文をファクス送りした。被爆体験を継承しようと活動している「長崎の証言の会」は久間氏と安倍首相あてに議員辞職を求める文書を郵送した。7月2日には、長崎市議会が定例議会で久間氏の発言撤回と再発防止を求める意見書を採択した。7月3日に田上富久市長らが上京し、久間氏らに会う予定だ。
「問題」を抱えた閣僚をかばうことを巡っては、07年5月末に松岡利勝前農水相が自殺した際に是非が問われた。今回はどこまでかばい続けるのか。