「ぬれ煎餅」を販売し経営危機を回避した銚子電鉄にあやかろうと、岐阜県にある赤字鉄道会社、明知鉄道が2007年5月から「おらが鉄道せんべい」の販売を始めた。すると、これが売れに売れて完売状態。同鉄道では「赤字解消につながりそうだ」と期待を込めている。柳の下に2匹目のドジョウがいた、というわけだ。
「銚子電鉄にあやかりたい」と始める
公式ブログでは「生産が追いつかない」とつづられている
明知鉄道は旧国鉄明智線を引き継ぎ、1985年に第三セクター方式で開業したが、以来22年間の赤字続き。負債額は約3,200万円。乗降客は年々減り、現在はピークだった頃の半分、一日平均1130人になっている。
経営難から抜け出すために、客の自転車を列車に乗せて途中駅からサイクリングを楽しむ「チャリンコ列車」や、列車の中で季節の料理を楽しむ「グルメ列車」などイベントを企画してきた。そんな中、一筋の光明のように飛び込んできたのが、銚子電鉄の「ぬれ煎餅」人気だったのだという。明知鉄道はJ-CASTニュースの取材に対し、「おらが鉄道せんべい」誕生の経緯を、
「銚子電鉄にあやかりたい、というわけで始めたんです。新たな名物に位置づけ、それが経営改善への起爆剤になってほしいと考えました」
と語った。
07年5月から発売した「おらが鉄道せんべい」は、中津川市の業者が販売している手焼きせんべいを仕入れ、鉄道のイラスト付きのパッケージに入れたもので、ピーナツ入りやココナツ風味など4種類。6枚入が250円で、10枚入り350円という値段だが、販売直後から「せんべい」は売れまくった。入荷は週1回だが、入荷して3~4日で完売。販売個所は恵那、岩村、明智の3駅と同鉄道本社の4箇所。月に合計1300パック入荷するのが限界で、買えない人が続出しているという。
子供の頃から親しんでた鉄道がピンチと知った
同鉄道では人気の理由を、味がいいことと、メディアが興味を持って報じたこと、としている。客層は50代以上が多く、自分達が子供の頃から親しんだ鉄道がピンチと知って買いに来てくれたのではないか、と分析している。ただし、心配も出ている。
「せっかく買いに来てくれたのに品切れで、ガッカリされて帰るお客様に本当に申し訳ない気持ちです」
入荷を増やすことは今のところ難しいというが、それでも毎月400万円~500万円の売り上げが見込め、売り上げの1割ほど利益が出るということだから、赤字解消に一役買うのは間違いないのだ。
一方、「先輩」の銚子電鉄だが、07年6月27日に出した07年3月期決算で、「ぬれ煎餅」の売り上げが前期比約1億円増の約2億8000万円になったことが分かった。乗客数も約71万3千人と同6万人増えた。「せんべい」効果で、再建が着々と進んでいる。