中国、ロシアも参入狙う小型機市場
MRJを商業化すれば総事業費は4,000億円になるともいわれるだけに、三菱重工が単独で負担するのにはリスクが大きすぎる。商社や銀行などにも資金拠出を要請する予定だが、現段階では実際の需要が読みきれないことから、事業のスキームがまだ固まっていない状況だ。
「採算ラインは350機以上、事業として利益を出すためには600機以上確保したい」(三菱重工幹部)
としている。受注の先行状況をみて、進むか止めるかを判断することになる。
国内の航空機市場を見れば、2010年の羽田空港の再拡張にMRJの機材引渡しが間に合わなくなってしまったことが懸念材料だ。この時期に小型機を使う国内地方路線の機体更新が進む見通しだ。だが、MRJは当初30~50人乗りだった計画をアジアの需要予測などを踏まえて改め、座席数を増やす仕様変更を行ったため、デビュー時期が遅れてしまったのだ。
アジアで航空需要の急成長が見込めるなど、小型旅客機の市場は今後大きく伸びるとされる分野だ。それだけに、現在はカナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルの2社がほぼ市場を独占しているが、中国、ロシアの航空機メーカーも新規参入を計画しており、熾烈な競争が避けられない。
新規参入メーカーである三菱重工にとっては、この分野で知名度が低く、航空機営業の経験もない。価格競争やメンテナンスへの対応も試される。
事業化の可否のリミットは来年春だ。関係者はかたずをのんで注目している。