日産自動車のカルロス・ゴーン社長に対する風当たりが強まっている。2007年3月期には、社長就任後初の減益となり、この責任を取って株主総会で常勤取締役の賞与をゼロにするなどの策を示したが、株主からは例年とは違って厳しい質問や指摘が相次ぎ、「辞任要求」まで飛び出した。
「役員報酬も減らすべき」に会場から拍手
総会では批判も相次いだ
同社は2007年6月20日、国立横浜国際会議場(パシフィコ横浜)で株主総会を開き、前年より約2割多い2,135人が出席。同社としては過去最高の人数となった。所要時間は昨年度同じ2時間27分だった。
07年3月期連結決算が7年ぶり、ゴーン社長の就任以来、初の減益となったことを受けて、ゴーン社長は冒頭のスピーチで
「業績目標が未達に終わった結果を真摯に受け止めています」
とした上で、
「2006年度は、役員賞与を支給する提案はいたしません」
と、賞与をカットすることで経営責任を明確化したい考えを示した。
株主は8人発言し、朝日新聞と読売新聞によれば、そのうち4人が経営批判を行った。批判の内容は以下のとおり。
「部品メーカーに対するコスト削減要求が品質低下につながっているのではないか」
「デザインが保守的」
「需要が伸びているハイブリッド車を何故出さないのか」
また、役員報酬がトヨタよりも多いことから
「(賞与ではなく)報酬も減らすべき」
との声が上がったときには、会場から拍手がわき起こったが、
「グローバルで考えれば過剰ではない」
などと反論した。株価の低迷に対しては、
「株価が過小評価されている」
と、「過小評価」という言葉を3回も使い、いらだちを見せた。
「ゴーン社長の役目は終わったのではないか」
最も強烈な批判は、
「必達目標を達成できなかった責任を取って辞任すべき」
「カリスマ性が、社員の愛社精神を低下させている。ゴーン社長の役目は終わったのではないか」
という、なかば「ゴーン社長は裸の王様」とでも言いたげな辞任要求だ。
一方のゴーン社長は、連結営業利益は前期比11.1%減だったが、7,769億円あることから、
「数字の上では高水準」
と、続投への理解を求めた。
また、「(会社に)貢献できなくなれば去らなければならない」と述べたが、「短期だけでなく、長期の目標もある」と、引き続き日産の経営に取り組む考えを示した。
ゴーン社長は総会後、「予想外の質問はなかった。言うべきことを透明性のある形で伝えることができ、建設的な総会になった」と振り返った。
株主総会を受けて、今後の方針などについて同社の広報部にたずねたが、
「プレスリリースに書いてあること以上のことはお答えできない」
と話すのみだった。