「PS3」用ゲームソフト「Resistance~人類没落の日~」で繰り広げられた銃撃戦で英国「マンチェスター大聖堂」が舞台となった問題で、「教会への侮辱に当たる」とし、英国国教会がソフトの回収と販売中止、教会への寄付をSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)に要求した。SCEは謝罪したものの、ゲーム自体については「著作権上の許可は全て取っている」「架空世界を描いている」と主張、回収や販売停止には触れていない。
建物の一部が「マンチェスター大聖堂」とそっくり
英国国教会では、ウェブサイトでSCEからの謝罪文を公表している
問題になっているゲームソフト「Resistance~人類没落の日~」は、SCEが企画し、アメリカのゲーム会社インソムニアック・ゲームズが制作したもの。06年11月の「PS3」発売と同時にリリースされ、全世界での売れ行きが100万本というヒットになっている。ゲームの舞台は1951年の「もう1つのイギリス」。地球侵略をもくろむ謎の生物とアメリカ陸軍との戦いを描いたFPS(一人称視点のシューティングゲーム)というジャンルのゲームだ。オンライン対戦も可能で、大勢でプレイが楽しめる。
問題となったのは、ゲーム内の戦闘シーンに「マンチェスター大聖堂」が使われていること。07年6月11日のロイター通信は、同大聖堂司祭が語った話として、ソニーはこのゲームを作る許可を大聖堂に求めなかった、とし、
「礼拝、祈り、学び、伝統の場所が、若者に銃撃の場として見せられていることに衝撃を受けた」
「ソニーがモスク、ユダヤ教会堂、あるいは今回の大聖堂などの宗教的建築物の内部を写真のようにリアルに再現し、その中で銃撃戦をするよう促すのは信じられない」
と伝えている。マンチェスター地区は、銃犯罪が多発する問題を抱えていて、同大聖堂が犯罪を減らすために活動してきただけにショックが大きかったようだ。
SCEは、SCEヨーロッパ社長名で教会側に謝罪。教会は謝罪文を07年6月15日に公表した。そこには「大聖堂の場面を使うことで感情を害するつもりはない。もし害したのであれば真摯に謝罪する」と書かれていたというが、一方、「ゲーム制作に必要なすべての許可を取っていて法的には問題ない」「ゲームは空想上のSFゲームであり、事実に基づいていない」とし、回収や販売中止には触れていないという。
「権利」と「文化」は別の問題だ
この問題についてJ-CASTニュースがSCEに取材すると、同社広報は、
「建物が似ているという以前に、神聖な場所で銃撃戦が行われたことで抗議が来ているようだ。折衝と話している。中であり、どうするか決まるのはこれから」
著作権問題に詳しい紀藤正樹弁護士は、J-CASTニュースの取材に対し、「建物」に著作権は存在しないため、ゴジラが東京タワーを壊したり、キングコングがエンパイヤーステートビルディングに登ったりと同じように、ゲームで表現しても著作権侵害に問われない、とする一方で、「権利」と「文化」は別の問題としてとらえなければならない、と話した。
「個々の『文化』に触れるゲームを作ってしまった事がミス。ましてやPSのゲームとなれば影響力が大きく、国際問題化されれば、仮に『権利』があったとしても状況が変わってくる。ソニー全体の評価への影響を考えると、ソニーは(大聖堂側の)要求を受け入れることになるのではないか」
と予測している。