自衛隊Winny情報流出 多発する本当の理由

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   自衛隊員のファイル交換ソフト「ウィニー(Winny)」を使った情報流出事件が頻繁に起きている。防衛省は2006年に「ウィニー」についての対応策を講じていたはず。なぜ、こんなに「ウィニー」を介した情報流出事件がよりによって自衛隊ばかりで起こるのか。

私物パソコンを職場から一掃するなど対策講じた

   広島県海田市の陸上自衛隊13旅団に所属する3等陸曹の自宅にあった私物パソコンから、自衛隊員の個人情報や給与に関する情報が流出したことが明らかになった。13旅団司令部広報室によると、2007年5月12日ファイル交換ソフト「ウィニー」を通じて情報が流出した模様で、07年6月4日に13旅団が情報流出を確認した。なぜ陸曹の私物パソコンに自衛隊の資料が入っていたのかは「調査中で分からない」という。

   防衛庁(現防衛省は)2006年4月12日、海上自衛隊「あさゆき」の機密情報が隊員の私物パソコンから「ウィニー」を介して流出した事件(47人が処分)を受けて、対応策を発表した。新たにデル製のパソコン56万台を40億円かけて支給したほか、私物パソコンのデータ削除や私物パソコンを職場から一掃するなどするとともに、業務用パソコンから隊員がソフトのインストールやUSBメモリーなどに情報を移すことを不可能にするなど対策を講じていた。

   広島県海田市の陸上自衛隊13旅団でも、私物パソコンを06年12月までに一掃するとともに、新しいパソコンが支給され、情報流出など発生しないはずだった。私物パソコンを業務で使うことについては、「自衛隊員に支給するパソコンが不足している」ことや「スペックが低く、私物を使ってしまう」などが理由ではないかといった推測もネット上で流れていたが、同司令部広報室は「OSは(ウィンドウズ)XP」で、「パソコンを主な業務とする隊員には1人1台ぐらいは支給されている」と説明する。

   しかし、「ウィニー」による情報流出事件は06年4月以降もあとを絶たない。

   07年2月には、陸自中部方面隊第14旅団で陸自の内部資料が「ウィニー」を介して流出。こちらも私物パソコンから陸自の訓練資料などが流出した。07年4月にも陸自松戸駐屯地の武器庫見取り図が「ウィニー」を介して、07年3月に流出していたことが発覚。同駐屯地に勤務していた2等陸曹のこれまた私物パソコンから流出した。

ITの進歩についていけてないし、技術にも疎い

   なぜ、対策を講じていながら立て続けに「ウィニー」による情報流出事件が相次ぐのか。防衛省はJ-CASTニュースに対し、

「まだこの対策を実施している最中。(対策に)完璧はないので、まだ実施しながら対策を講じている段階で、現に本日(6月8日)も有識者をお招きして情報流出対策会議を行っている」

などとしている。イージス艦の機密情報が外部に流出した事件では、神奈川県警と海自警務隊が日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反容疑で2等海曹を捜査するなど、もはや機密情報の流出は日米の防衛協定に関わる重大問題。にもかかわらず、情報流出はとどまることを知らない。

   しかし、対策以前の問題とも語る専門家もいる。軍事ジャーナリストの神浦元彰氏は自衛隊の「危機管理・情報管理能力」に警鐘を鳴らす。

「自衛隊は感覚が甘いんです。一般社会と隔絶されていることで、一般社会の常識が自衛隊では常識になっていない。私物のパソコンで業務を行うことも、つい去年までやっていたんですよ。ITの進歩にはついていけてないし、技術にも疎いんですよ」

   建前上は情報流出対策を講じているようでも、現状ではそういった対策が全国で徹底されていないのが現状でもある。さらに、神浦氏は、自衛隊の「危機管理・情報管理能力の甘さ」を物語るこんなエピソードを紹介してくれた。

「暗号化された無線を使わないといけないのに、自衛隊は今でも私物の携帯電話を使わないと演習できないんです。そんなもの戦場に行ったら(傍受や電波妨害などで)使えないのに、ですよ。もう、解決のしようがないんです。そのくらい、携帯電話とかITの技術についていけていない」
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