「景気は、経営者の実感としてゆるやかに回復している。設備投資も前期より回復しているし、海外の景気も確かな足取りで拡大している」
経済同友会代表幹事の桜井正光リコー会長は2007年6月5日、経団連記者クラブ(財界担当)との定例会見でこう発言した。景気の先行き不透明感が出ている中で思い切った発言となった。
桜井氏は「自信を持った発言だよ」と会見後私に笑顔を見せてこう答えた。
「もちろん地方各地からは景気について厳しい声もある。しかし景気は全体的にはあがる基調にあり、(地方と大都市圏の)格差が広がっているとは思えない」桜井氏は地方が苦しいとの声があることを、わかった上での発言であることを強調した。
強気の発言を支えたのは、経済同友会の「2007年景気定点観測アンケート調査」だ。それによると07年6月時点で「拡大している」と答えたのは、経済同友会会員および各地代表幹事など回答者224人のうち1.8%(3月時点1.4%)で、「ゆるやかに拡大している」と答えた人の比率は80.8%(06年12月期80.2%)と依然として強気の経営者が多い。
7月以降、07年後半の景気については、「拡大する」と答えた人の比率は2.7%と3月時点の1.9%より高かった。しかし、「緩やかに拡大する」と答えた人の比率は73.5%と、06年12月時点の65.0%よりは高かったが3月時点の80.7%よりは低かった。問題はこの落差をどう考えるかだ。景気の決め手になる個人消費について「回復する」と答えた人の比率が45.0%を占め、06年12月時点での26.5%、07年3月時点での23.1%よりはるかに高い数字を示した点などを勘案すると桜井氏の強気の発言も根拠がありそうだ。
【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、帝京大学教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「クリーンカー・ウォーズ」(中央公論新社)「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。