「ネコババ」が結構あることを、社保庁自身認識?
社会保険庁職員課によると、1997年から2006年までの10年間に職員による業務上横領事件は17件あった。05年に2人、06年も2人処分対象者が出ている。07年もすでに1人いる。職員が発覚時に退職していない限りすべて免職で、横領した額も返還させているという。発覚したのは氷山の一角ではないのか、との質問に対しては、「そんな事態は100%想定できない」と全否定した。横領した職員が横領したままにすると、未納による督促状が被害者へ届き発覚するケースもある。長期に渡って横領を続けられながら被害者が気がつかないとは考えにくいという。最初の横領から1年以内など比較的短期間で発覚しているという。
では、督促状の手配まで手を回していたらどうなるのか。発送時に関与したり自宅ポスト投函時に待ち伏せしたり。過去の逮捕事例や処分事例を知れば、督促状対策が必要なことは思いつきそうなものだ。同課は内部監査で発覚した例もあるというが、06年8月末の免職処分発表時の再発防止策として「日々の確認、月ごとの確認の徹底を、局長より各事務所の所長あて指示した(ママ)」と挙げるほどのレベルだ。「確認行為の決裁が上司に上がらず注意したが是正に至らず結果として詐取行為を発見できなかった」ことを受けた措置だとしている。
年金問題に詳しいジャーナリスト、岩瀬達哉さんは、6月4日の毎日新聞の夕刊(東京版)で年金問題について取材に答え「(社会保険庁の)汚職事件になった携帯金銭登録機の導入の背景には、保険料を預かっても適切に処理しない職員が多かったこともあるそうです」と答えている。逆に言えば、「ネコババ」に近いケースが結構あることを、社保庁自身認識しているのではないか、というわけだ。
6月6日の読売新聞朝刊(同)は、年金相談をしている社会保険労務士らの間で「(発覚した職員による着服事件の)ほかにも保険料徴収担当者の着服があったのではないか」との見方が出ている、と報じている。
社保庁に記録はなかったが、領収書などを提示して記録を回復した人は、06年8月から同12月までに同庁が受けた相談で55人。認められた例は、領収書が残っていたほか、保険料を引き落とした銀行や郵便局の通帳記録や細かく記録した家計簿を保存していたなどだ。