年金保険料を払ったはずなのに、社会保険庁の事務処理ミスなどで記録が残っていない「消えた年金」問題が国会の大きな焦点になっている。しかし、単なる記録漏れではなく、社保庁職員が保険料を「ネコババ」していたらどうなるのか。証拠を見つけるのは困難なことは容易に想像できる。事実、過去には社会保険事務所の職員が年金保険料の業務上横領容疑で逮捕された事件が起きている。
ニセ領収書渡して横領した事件も
振り込め詐欺への注意を呼びかける社会保険庁のホームページ
消えた年金の中には、事務的ミスとは言えないものも含まれているのは間違いない。社会保険事務所の職員が年金保険料の業務上横領容疑で逮捕された事件が過去に何度も起きているのだ。
06年8月には、長野県警が長野南社会保険事務所の当時の保険料係長を業務上横領容疑で逮捕した。徴収した国民年金保険料を実際に受け付けた件数より少ない件数でコンピューターに入力し、23人分32件の計約190万円を着服した疑いが持たれた。事務所側で管理する領収の書類を容疑者が管理し、保険料が納められたことを分からなくしていたという。
静岡県警は05年11月、浜松東社会保険事務所の元徴収課長を同じ容疑で逮捕した。車部品加工会社など2カ所の事業所から徴収した厚生年金保険料や健康保険料約400万円を着服した疑いがあるとされた。にせの領収書を渡していた。
また、新潟県警は02年11月、新発田社会保険事務所の元国民年金推進員を逮捕した。同事務所で非常勤で働いていた。1家族の国民年金保険料10カ月分13万円を着服したとされた。保険料を納めたのに督促状が来たことで苦情が相次ぎ、同事務所の調べで計14件48万円を着服していたとして告発されていた。
結果的には発覚したわけだが、ばれないよう偽装工作をしている例がある。金は懐に入れて、社会保険庁には入金の記録を残さなかった場合、領収書でも保存していないと、証拠はいっさい存在していないこともありうる。