日本相撲協会を巡る八百長疑惑に絡み、新たな疑惑が浮上した。週刊現代が2007年6月4日(6月16日号)、相撲協会側の弁護士が、協会側を告発した形で同誌に証言テープを提供した女性とかつて愛人関係にあったと報じた。一連の疑惑報道では、同協会は3度も提訴し、今後裁判がある。報道が事実なら「当事者」が弁護士を務めているわけで、問題はないのだろうか。
弁護士は「この件はノーコメントです」
大相撲八百長疑惑を続々伝える週刊現代。最新号は愛人疑惑を新たに報じた。
6月16日号の週刊現代は「白鵬『八百長告白』宮城野親方の愛人は相撲協会『顧問弁護士』の愛人だった」というタイトルの特集を組んだ。同親方が八百長の内幕を語ったとされるテープを同誌へ渡した女性は、親方の愛人だった。一方で、彼女は1996年ごろから約2年間、同協会顧問弁護士の伊佐次啓二弁護士の愛人でもあったという内容だ。
2人が一緒に写ったという写真や、伊佐次弁護士が女性へ送ったとされるラブレターの複数の封筒の写真も掲載している。「法廷でかつての愛人と対面したとき、はたしてまともな尋問ができるのだろうか」と結んでいる。
伊佐次弁護士は6月5日、J-CASTニュースの取材に対し「(報道された女性は)知人だがこの件はノーコメントです」と答えた。愛人報道を否定したということか、と質問すると「今言ったことがすべてです」と述べるにとどまった。提訴するかどうかについては、(これまでに提訴した)相撲協会の裁判に全力を尽くす、という。今のところ提訴は考えていないと受け止めて「構わない」。
同協会広報部に話を聞くと「裁判に関することは対応できません」と回答した。今回の「弁護士の愛人だった」報道は裁判になりそうにないと伝えると「一連の流れにあることですから」。5月25日にJ-CASTニュースが報じたように、「八百長テープ」を巡る訴訟の有無を問う質問のとき、協会広報部は「弁護士に聞いてくれ」と繰り返していたが、今回はこの言葉は出なかった。
弁護士規程では、問題はなさそう
週刊現代編集部はJ-CASTニュースの取材に対し、「伊佐次氏ご本人がご自身の過去の行動を一番よくご存知であり、それが法廷で明らかになっては困るからこそ、法的手段に出られないのであろうと推察します」と答えた。同部は、記事の女性が伊佐次弁護士の「愛人」だったことを確認しており、証拠も持っているとした上で「今後、いかなる方法をとられても、本誌の報道を否定することは不可能だと考えております」と自信を見せた。
元愛人の女性が証人に立つ裁判で、利益が異なる側の弁護士で元愛人の男性が法廷に立つことに問題はないのだろうか。東京のある弁護士によると、具体論では話せないがあくまで一般論として、日弁連の弁護士職務基本規程を読む限り、問題はなさそうだ。同規程は基本倫理などを定めている。訴訟の相手方が同居の親族などの事件は、「(同意がある場合を除き)職務を行ってはならない」という定めはある。しかし、訴訟当事者と証人とは異なるのでこの規程は当たらない。また、「過去に愛人だった」ということは、現在の問題とは別だと考えられる。もっとも「まあ愛人を持つことの是非が一般的にどうなのかという点は残りますが」とひっかかる点も少しはあるようだった。