東京証券取引所は新興企業向け市場「マザーズ」の改革に乗り出す。2006年のライブドア事件のショック以降、国内の新興市場株は低迷から脱することができず、マザーズ指数は5月に史上最安値をつけた。背景には新興市場の上場審査の甘さなどへの市場の不信がある。東証は今年度中に上場廃止基準を見直すなどルールを改訂する方針だが、市場の信任回復は容易ではなさそうだ。
新興市場が全国に乱立、上場審査や管理が甘くなった?
東証は「マザーズ」の改革に乗り出す
マザーズ指数だけでなく、ジャスダック指数、大証ヘラクレス指数も含め、新興市場は5月、軒並み最安値を更新した。06年春までマザーズに上場していたライブドアの証券取引法違反事件を機にイメージが悪化しているほか、新興市場を代表するインターネット関連企業などの07年3月期決算が不振で、買いが手控えられているためだ。さらに、最近では、新興企業の決算訂正が相次ぎ、投資家の信頼が揺らいでいることも、追い打ちをかけている。
マザーズは99年11月、高い成長性が見込める新興企業に、できるだけ早期に資金調達の場を提供しようとの狙いで創設された。このため、上場基準を東証1、2部に比べて大幅に緩和しており、赤字や債務超過でも上場を可能にした。
しかしマザーズ開設はそもそも、当時は大阪証券取引所に開設準備が進んでいた「ナスダック・ジャパン」(現ヘラクレス)への対抗という側面が強かった。マザーズ上場第1号の「インターネット総合研究所」と「リキッドオーディオ・ジャパン」は、いずれも日本証券業協会が運営する店頭市場(ジャスダックの前身)に上場を目指しており、東証が横取りした形だった。
99年10月には名古屋証券取引所が「セントレックス」、00年4月には札幌証券取引所が「アンビシャス」を相次ぎ開設、01年7月には日証協が店頭市場の呼称をジャスダックに変え、新興市場は全国に乱立した。この結果、激しい上場予備軍の争奪戦が展開され、上場審査や管理を甘くする「安易な道」に走ったといわれる。