福岡県内で光化学スモッグの発生が相次ぎ、原因は「中国発」の可能性が高まっている。福岡県での注意報は10年ぶりの発令。にもかかわらず、環境省の反応は鈍い。
福岡県は2007年5月30日、同県内で観測された光化学スモッグは「中国大陸方面から流れてきた汚染物質の影響が強いと考えられる」と発表した。九州地方知事会も同日、福岡県の発表を念頭に、国際的対応を視野に入れた対策に取り組むよう国に要望することを確認した。北京オリンピックを控え、急速な工業化が進む中国への疑いが深まっている。
5月27日には、福岡、山口県などで光化学スモッグ注意報が発令された。福岡県北九州市では、市内の小学校で予定されていた85校の運動会が中止となり、児童や教職員ら300人以上が目やのどの痛みを訴えた。福岡県内では、4月26日にも注意報が出ていたが、これは10年ぶりの発令だった。
離島の五島列島でも発令
首都圏や大阪周辺では光化学スモッグの注意報発令は珍しいことではない。しかし、九州地区では異例だ。10年ぶりの発令だった福岡だけでなく、長崎県では06年5月に史上初の発令があり、07年4月にも2回目の発令があった。しかも、今回は離島の五島列島も発令対象となった。都市化が進んだから、では説明がつかない現象だ。
福岡県では、5月8、9日にも注意報が出た。10年ぶりの発令に加え連続発生した異常な事態に同県保健環境研究所は、注意報が出た日の状況を過去4年間の大気状況と比較検討した。30日の県の発表の基になった調査だ。J-CASTニュースが同研究所に調査結果を聞くと、様々な状況が、大陸からの汚染物質の移流が主な原因であることを示唆している、と説明した。中国で発生した光化学スモッグが流れてくるか、中国から流れてきた汚染物質が、東シナ海海上で光化学スモッグに変化したか、の可能性が高い。
「様々な状況」の主なものは次の3点だ。1点目は、汚染物質が強い日光で化学変化するので通常日中に発生するのに、深夜に注意報発令基準に近い高濃度状態だった日があること。2点目は、長崎県の五島列島などの離島で高濃度が観測された日と(東の位置に当たる)福岡県内の観測結果に関連が見られる。3点目は、気圧配置を調べると、気流が大陸側から九州へ流れていると見られる日と、福岡で高濃度だった日とが連動性がある。
「影響がゼロでないにしても度合いが分からない」
実害は出たのか。北九州市によると、小学校の運動会と重なり300人以上の被害報告があった5月27日を除くと、1日当たり3人から24人が目やのどの軽い痛みを訴えた報告が上がっている程度で、深刻な被害は出ていない。深夜に高濃度状態があった日も、注意報が出た訳ではなかったこともあり、飲み屋街に影響が出ることもなかったようだ。
環境省水・大気環境局によると、06年に光化学スモッグの注意報発令があったのは、全国25都府県。東京と大阪、埼玉県では1年で16日以上も発令があった。発令自体は珍しくない。九州地区の現状についてはどう捉えているのか。久しぶりの発令があった事実は把握しているが、自治体が中国からの影響を訴えていることについては、担当者は「様々な調査結果があり、寄与(影響)がゼロでないにしても度合いが分からない」と慎重な姿勢を見せた。
しかし、福岡県の担当者にJ-CASTニュースが聞くと、日本の法規制が厳しく、汚染物質の濃度が異常に高いことが起こりえないため、「原因が中国にあるのは、北部九州の担当者の半ば常識だ」と話した。