日本マクドナルドの原田泳幸社長が2007年5月24日のニュース番組に登場し、「マクドナルド」店舗のハンバーガーなどの価格を「地域ごとに変えたい」と話した。さらに、外食産業全体で値段設定を見直すべきだ、と提言した。確かに都心と地方を比較すれば、出店・運営コストが異なり、顧客の所得格差もある。しかし、そんなことが本当に可能なのか。
ハンバーガー200円を120円にするならインパクト
マックの戦略に注目が集まっている
原田社長が登場したのは日本テレビ系「日テレNEWS24」の「まーけっとNavi」のコーナー。原田社長は同番組のインタビューでこう話した。
「東京も地方も同じ値段で売って良いのだろうか。東京で損して地方でもうかるのはおかしい。地域ごとの価格があってもいいのでは、と真剣に考えている」
さらに、
「外食産業全体で値段設定を見直すべき」
と大胆な提言。
つまり、人件費等の運営費や、出店費用が高い都会と、そうでない地方とで同じ値段で販売することはおかしい。業界全体で変えるべきというわけだ。
流通業界に詳しい三菱総合研究所主任研究員の高橋衛さんはJ-CASTニュースの取材に対し、「マック」の戦略を「理屈に適っている」と評価したが、いくつかの疑問点を指摘した。
それは、都会と田舎の境界線をどうするか。また、マック全店舗の三分の一がフランチャイズチェーンの個人事業主のため、説得に相当苦労するはず、というのだ。消費者側としても、チェーン店の「一物一価でサービス同じ」というシステムに慣れているため、違和感を覚える可能性があるという。消費者のそうした意識を変える切り札が価格になるわけだが、
「マックの200円の商品を10円、20円安くしてもたかが知れています。都心と田舎の給与格差が40%あると言われているから、200円を120円にするならインパクトが出る」
と言うものの、コスト的に割に合うのかわからない。
「会社として具体的な発表をすぐにするということではありません」
「マック」はどんな「秘策」を練っているのか。J-CASTニュースは日本マクドナルドに取材した。すると同社広報から意外な答えが返ってきた。
「原田は頭で考えていることを提言しただけで、会社として何か具体的な発表をすぐにするということではありません。店側の判断や日本の商習慣もあり、慎重に検討していきます」
ということは、原田社長はニュース番組のインタビューで「将来の戦略」を語っただけ、という事にすぎないのかもしれない。
ちなみに、J-CASTニュースはモスフードサービスにも取材してみた。同社広報は、
「(地域で価格差をつけるという話は)初めて聞きました。当社は地域価格差を付けたことはありませんし、付ける予定もありません」
と答えた。吉野家ディー・アンド・シーも
「吉野家の看板があるところは日本中どこでも同じ値段です。それがチェーンストアの原則だと思っています」
と話す。実現へのハードルは高そうだ。