ウィニーの利用 即違法行為になるのか

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   コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が、ファイル交換ソフト「ウィニー(Winny)」の「合法的な利用」を「机上の空論だ」とする声明を発表した。利用即違法になるという考え方だ。しかし、単に「ウィニー」を利用する行為、アップロードはしないで、ダウンロードだけする場合でも「違法」となるのか、専門家のなかでも評価は異なっているようだ。

「仕組みを前提とする限り、侵害行為を行っているとみなされる」

ACCSは「ウィニー合法利用説」を「机上の空論」とする声明を発表した
ACCSは「ウィニー合法利用説」を「机上の空論」とする声明を発表した

   コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)によると、京都府警生活経済課ハイテク犯罪室と五条署は2007年5月18日、漫画誌『週刊少年ジャンプ』(集英社)に掲載された漫画作品を、ウィニーを通じて権利者に無断でアップロードしたとして、東京都足立区の少年、岩手県盛岡市のアルバイト男性、大阪市大正区の会社員男性を著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで逮捕した。同協会によればウィニーを利用して刑事摘発されるのは、2度目だという。

   この逮捕の日、ACCSの久保田裕専務理事・事務局長は今回の事件について「Winnyによる侵害行為が蔓延している実態を改めて示したもの」とする声明を発表。ウィニーを利用すること自体、「合法ではない」との見方を示した。

「現状のWinnyネットワークでは、参加するだけでファイルの断片を勝手に中継させられるという機能があることからも、完全な合法利用と言い切るのは無理があると考えます」

   個々の利用者が、違法ファイルをバケツリレー方式で「中継」する蓋然性が高い、という現状からして、違法行為以外の用途で使用される可能性が皆無だ、と久保田専務理事は指摘しているのだ。

   実際、こうしたウィニーの「実情」を利用者は知らないはずがない。そう判断すれば、法的には「違法」だ。

   IT関係に詳しい高橋郁夫弁護士は、ウィニーが仮にダウンロードで完結することがあれば、「違法」とするのは「微妙な判断」とする。ただ、不特定多数との他者との共有が前提とされている現状からすれば、違法行為になるとの見方だ。高橋弁護士は「P2P一般の抽象的な話ではない」とした上で次のように指摘する。

「ウィニーの仕組みは、ダウンロードと同時にアップロードするというもので、現実の使われ方を前提とする限り、法論理的には侵害行為を行っているとみなされるといえる。ほとんどが著作権侵害データとわいせつデータという事実の前提からすれば、侵害行為もおおよそ『故意』とみなされる」

「単に中継しているだけで違法と決めつけられるのか」

   一方、落合洋司弁護士は、今回の事件については「正当化する余地がない」としながらも、ACCSの「ウィニー合法利用説は机上の空論」とする見方に疑問を呈している。

   その背景には、京都地裁がウィニー開発者に対して06年12月に下した判決の中で、「システム自体は価値中立的なものである」とする村井純・慶応大学教授の公判での証言に一定の理解が示されたことがある。落合弁護士は、「ウィニーの現状からすれば違法となる可能性が高いのは確か」との見方を示した上で、J-CASTニュースに対し次のように語る。

「(京都地裁の判決は)故意だった場合に違法になる、という見方で、単に中継しているだけで個々のファイルについて個別の認識を持たない利用者の行為まで違法と決めつけられるのかという疑問がある。線引きするのは非常に難しい」

   つまり、「現状」を客観的に判断すれば、ウィニー利用者も著作権侵害行為を意図しているとみなされ、「違法」とみなされるのが確実だが、一方で、理論的に考えれば、個別の利用者が100パーセント意図的に侵害行為をする意図を持っているのは定かではない。というのも、「システム自体は中立的」だからである、ということのようだ。

「合法利用を『机上の空論』と一面的に決め付けてしまうことがいいことなのか。ファイル共有システム自体は中立的なものと判断されているし、使い方まで『違法』とされれば、技術の進歩が止まってしまう可能性さえもあるのではないか。私自身、疑問を感じつつ考えているところだ。ウィニーだけクローズアップしないで、広い視野で見ないといけないと思う」
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