2007年5月16日、駒沢大学、東京工科大、和光大(いずれも東京)が、はしかに感染した学生が確認されたとして、1~2週間休校するとそれぞれ発表した。専門家によると、はしかの流行は、日本の対策後進国ぶりを示すお粗末な事態で、日本は「はしかの輸出国」というありがたくない称号を海外でいただいている。
はしかを巡る騒動は、大学野球の春季リーグ戦で18、19両日に予定されていた帝京大対武蔵大の試合が延期になる影響も出た。帝京大の野球部員数人が感染し、部活動が禁止になったためだ。これまでに東京の創価大、上智大も全面休講となり、都立高校で臨時休校になるところも出た。
厚生労働省は5月11日に異例の注意喚起通知を都道府県に出していた。
海外メディアから「なぜいまだに」と皮肉っぽい取材
5月12日から19日まではしかで休講になった上智大学(左)
国立感染症研究所の感染症情報センターは、15歳以上のはしか患者の発生について、全国約450カ所の基幹病院から報告を受けている。15歳以上の患者は、07年に入って4月29日までで130人が確認された。06年は同時期9人、年間を通しても40人だった。05年の同時期は3人。激増ぶりが分かる。
07年の130人のうち、20~24歳が最も多く、40歳以上はほとんどいない。3月中旬以降、急増した。東京など関東が多く、長野や宮城県も増えてきた。数は少ないが、大阪府や香川県など西日本の報告もある。
同研究所の話だと、はしかが流行した2001年の同時期は、07年より多い267人の報告があった。今回はそれに比べると、特に患者が多いわけではない。
予防接種を従来の1回だけではなく、効果を確実にするため2回受けるよう推奨するようになったのはようやく06年からだ。1回だけでは免疫力が十分にはつかず、発病することもある。韓国や欧米に比べると10年以上の対策の遅れがあった。そのせいもあって、時々流行が発生してしまうようだ。
日本では予防接種が徹底されていないこともあり、はしかをほぼ制圧した欧米や韓国、豪州などと比べ日本は「はしか対策後進国」と見られている。潜伏期間に海外旅行に行き、国外で発症する日本人の報告が毎年のようにされ、日本ははしかの輸出国だ、という非難の声がある。海外メディアからなぜいまだに日本ははしかを制圧できないのか、と皮肉っぽい取材を受けることもある。
5月17日付けの日経新聞のコラム「春秋」でも、はしかの流行問題を取り上げた。「昔に比べ心強い対策があるというのに、この騒ぎは何とも情けない。だれも負い目を感じないのだろうか」と結んでいる。
ある研究官は「忸怩(じくじ)たる思いはある」と話した。