安倍晋三首相が元テレビ朝日アナウンサーの丸川珠代さんに東京選挙区からこの夏の参院選に出馬するよう要請した。丸川さんは要請に合わせるかたちでテレ朝から退職しており、出馬するのは確実だ。現役のアナウンサーが要請を受けて退社までして選挙戦に出馬するのは異例だ。しかし、丸川さんは日ごろ政治に並々ならぬ関心を示していて、出馬は「不思議じゃない」とする声もある。
安倍首相は2007年5月16日午前、丸川珠代さんを首相官邸に招き、参院選に自民党公認候補として出馬するよう要請した。丸川さんは「考えて結論を出したい」としており、出馬については回答を留保している。
「脱・女子アナ宣言」と題されたコラムを掲載
丸川さんはコラムのなかで頻繁に政治について語っていた
東京自民党支部連合会は、J-CASTニュースに対し、「記者会見などは現在のところ決まっておらず、(出馬するか否かについて)把握していない」としながらも、「出馬するとなれば自民党本部かそれ以外の場所で会見を開くことになるだろう」としている。丸川さんと接触しているとされる石原伸晃・自民党幹事長代理の事務所にも取材を試みたが「今日はこちらに来ない。(取材は)無理」とのことだった。ただ、丸川さんがアナウンサーを務めたテレビ朝日広報部によれば、丸川さんは5月16日付けで依願退職したとしており、出馬するのは確実と見られる。
丸川さんは、兵庫県神戸出身で現在36歳。東京大学経済学部卒業後、93年にテレビ朝日に入社した。「ANNニュース」「ニュースステーション」「ビートたけしのTVタックル」「朝まで生テレビ」などの政治系の看板番組を担当し、2003年6月から約1年間ニューヨーク支局に転勤した。
そんな丸川さんだが、かねてから政治への関心は仕事柄とはいえかなりの高さだ。そんな関心の高さを物語る「脱・女子アナ宣言」と題されたコラムがネット上に掲載されている。コラムの掲載は01年04月17日~05年07月26日まで続いている。
最初のエントリーでは、
「たけしさんの隣に座っている、あの笑わないアナウンサー、といえばわかってもらえるかな?もちろんあれは、私が笑ってしまうと面白くも何ともないから、笑うのをがまんしています。言ってみれば"笑わないキャラクター"に入っているんだけど、いつもあのままで怖い人だと思われがちなので、ここでぜひ言わせて下さい!普段はもちろん普通に笑います(笑)」
と書いているが、その後のエントリーは、「朝まで生テレビ」の仕事の様子を交えて、そのほとんどが「北朝鮮」「小泉首相」「鈴木宗男」といった政治ネタになっている。
アナウンサー時代は「特別扱いされていた」
01年7月24日号「いよいよ参院選です」というエントリーでは、「国会議員にとって、選挙はいちばんやっかいもの。お金も体力も消耗し、落ちたら"ただの人"です」としながらも、
「実際のところ今回の選挙では、"タレント候補"といわれる、テレビなどでの有名・著名人が立候補しているケースが、与党・野党を問わず見られます。もちろん、行政や政治の場で経験がなくとも、30歳になった時点で、すべての国民に参議院選挙の候補者になる資格(被選挙権)がありますから、有名・著名人であることだけで批判するのは、的外れでしょう」
などと01年の参院選について述べている。さらに02年10月に行われた衆参統一補欠選挙については、その投票率の低さを挙げて、
「投票率の低さ、白票の多さは、現在の政権というより、政治そのものへの不満の表れ、と見ることも出来るでしょう。確かに、投票してもしなくても、その結果は結局、私たちの生活に降りかかってきます。しかし、そこで考えて欲しいのは、不満があるのに、黙ってムスッとしているのと、口に出して表現するのと、果たしてどちらが望ましいだろうか?ということです。少なくとも民主主義という仕組みは、一人一人が自分の考えを持っていて、それを表現することを前提にしているのではないか?と私は思います。そして、議会に代表を送り込む"議会制民主主義"を私たちが採用している限り、その不満も代表を通して表現するべきではないでしょうか?」(2002年10月29日号)
と有権者が投票に行かないことに批判的な意見を「熱く」述べている。これらから、仕事柄とはいえ、政治や選挙に並々ならぬ高い関心を丸川さんが持っていたことが伺われるのである。
「朝まで生テレビ」関係者によれば、アナウンサー時代は「特別扱いされていた」という丸川さん。「出馬は十分ありうる」という人もいる。丸川さんの出馬報道を受け、07年5月16日に放送されたフジテレビ系の情報番組「とくダネ!」では佐々木恭子アナウンサーも次のように述べている。
「ビックリしませんでした。あれだけエネルギーがある人は、こうしたことがあっても不思議じゃないと思いましたね」