コンビニの一部では、店内で作られた惣菜とあったかいご飯を売り物にした「できたて弁当」が買える。このサービス、利用客にとってはすこぶる好評のようだが、コンビニにとってはまだ「実験的」な試みだ。人件費や材料費、設備費などコスト面で課題が多く、急速には普及しそうにない。
スリーエフは5年前から始める
コンビニ弁当の評判はあまり良いとはいえない。例えば「Yahoo! 知恵袋」で、「コンビニ弁当とチェーン店の弁当屋で買う弁当のどちらが好きか」の問いには、
「どこのコンビニ弁当も値段が高いわりに美味しくない。(電子レンジで)チンしても不味い」
「なんでもできたての方がおいしい」
といった弁当屋の「できたて」を支持する声が多い。
一方、コンビニ側からもこんな試みも出てきた。5年ほど前から、スリーエフ神奈川県庁前店では、店舗内で作った惣菜20種類ほどをガラスケースの中に並べ、客におかずを選んでもらう弁当を販売している。客は3種類のおかずを選び、ご飯も白米か玄米、五穀米から選ぶ。値段は500円弱。今の時期だと葉物のおひたしや竹の子の煮物など、旬の野菜を使った惣菜を味わうことができ、健康的だとして女性から人気だ。
スリーエフ総店舗数649店のうち、同様のサービスを行っているのは同店を入れても3店舗のみ。他の大手コンビニとの差別化をはかる意味で「できたて弁当」の意義は大きい。 しかし、同社広報はJ-CASTニュースにこう話す。
「どの店舗にもこの『できたて』弁当が良いというわけではありません。例えば近くのスーパーがつぶれてしまってお客さんが野菜や惣菜を買えなくなった、オフィス街で近くに手作りの弁当を出す店がないなど、立地に合った展開が大切です」
つまり、人件費や材料費などを考えると、今後「できたて弁当」をウリにする店舗をそうは増やせない、というわけらしい。
ローソンやセブン-イレブンも慎重
スリーエフで好評だという「できたて弁当」だが、ローソンでも06年4月にオープンしたMK神戸空港前SS店をはじめ、店で弁当を作るサービスを行う店舗はいくつかある。
ただ、ローソンの場合も事情は似ていて、同社広報は、
「(できたて弁当を出す店舗が)増えないのは、まだまだクリアしなければならない課題が多いということ」
と話す。
一方、コンビニ業界1位のセブン-イレブン・ジャパンには「できたて弁当」を出す店舗はない。理由は、(1)「できたて弁当」を求める客のニーズは本当に高いのか(2)店舗で弁当を作るという設備が整うかが疑問、などだ。さらに、「店によって味の良し悪しが生じてしまえば、チェーン店全体のイメージを損なうことになる」点を気にしている。