「若いBSE(牛海綿状脳症)感染牛は安全だから輸入して食べよう」。こんな風に受け取れる社説を読売新聞は07年5月11日付紙面で掲載した。他紙の論調はおしなべて読売とは違い、慎重だ。ホントに若い感染牛は安全なのか。
日本も国際基準に合わせるべきではないか
読売新聞の「大胆社説」が注目されている
厚生労働省の研究班が、BSE(牛海綿状脳症)とされた月齢21ヵ月と23ヵ月の牛の脳を使ったマウス実験を実施、その結果、「感染性は認められない」との報告書を2007年5月9日に出した。これを受けて「国際基準に合わせる時が来た」というタイトルの社説が掲載された。
この社説には概ねこう書かれている。
「BSEへの感染が確認された牛の月齢は、世界的にも3歳以上がほとんどだ。日本のこの2頭が異例だった。異常プリオンの量も、ほかの感染牛の500分の1から1000分の1と微量で,『これでBSE感染牛といえるのか』と指摘する声が当時からあった」
そして、
「(日本が牛肉を輸入する場合)月齢20か月以下で、脳や脊髄といった危険部位をすべて取り除くことを条件にしている。この厳しい条件のため、米国産牛肉の輸入は低迷している」
「世界貿易機関でも、国際水準(検査対象の月齢は30ヵ月以上)を超える独自の安全基準による輸入制限は、違反と認定される恐れがある。世界の常識に従って、日本も国際基準に合わせるべきではないか」
つまり、月齢21ヵ月と23ヵ月の牛であれば、検査せずに輸入して食べても「安全」であり、米国からどんどん輸入すべき、という論調だ。
他の新聞を読むと、今回の実験結果によって「米国からの輸入条件緩和圧力がさらに強まる」という考えは共通している。ただ、実験結果の評価については読売とは食い違う。
「感染性が否定されたとは考えていない」
今回の実験結果の評価や、検査牛の月齢引き下げについて懐疑的な書き方をしている新聞も多い。
「マウス実験で感染性が証明できないからといって、ただちに2頭の牛が安全だったとは言えない。ある専門家は『本当に感染性がなかったのか、原因物質の量が少なくて感染が進まなかったのか分からない』と指摘する」「米国のBSEの安全管理体制には不透明な部分が多い」(朝日新聞、07年5月9日付け)
「専門家によると、実験に使った脳のサンプルや、それに含まれる異常プリオンの量が少なすぎ、感染が成立しなかった可能性があるという」(産経新聞、10日付け)
「学識経験者や政府関係者の多くは、今回の結果が直接、条件見直しにつながるほどの安全性を示しているとはみておらず、今後も慎重な議論が続きそうだ」(岩手日報、同)
毎日新聞は、厚労省輸入食品安全対策室の話を掲載している。
「2頭のプリオンは通常のBSE牛の500分の1から1000分の1で、その感染性がマウスでは検出できていないということだ。実験は終わっていないし、感染性が否定されたとは考えていない」(5月9日付け)
米国との輸入条件緩和の協議開始を前に、消費者としては判断に迷うことになりそうだ。