発売から3ヶ月が経つ新型OS「ウィンドウズ・ビスタ」だが、ユーザーからはあまり良い声が聞こえてこない。「ものすごく重くなった」「見た目がかわるので、操作しづらい」といった声のほか、PCサポート業者は「お客さんがPCを買うときは、ほとんどがXPを選びますね」と話す。本格的な普及までには、まだまだ時間がかかりそうだ。
勤務先でビスタ使用は皆無
「ビスタ」の普及には、しばらく時間がかかりそうだ
2007年1月30日、「ビスタ」の個人ユーザー版が全世界で発売され、発売直後は景気の良い記事が並んだ。例えば、PC雑誌「日経PC21」07年4月号は、発売当日の量販店の
「XPと比べて販売本数は1.5倍」
「当初の予想以上に売れている」
といった声を紹介し、
「(マイクロソフト)社長が記者会見で発表した『ビスタはウィンドウズ95の5倍、XPの2倍売れる』という予測も真実味を帯びてきた」
と評している。さらに3月下旬には、マイクロソフトは
「個人向け『ビスタ』の販売が、売り出しから1カ月間で2,000万本を超えた」
と発表、「滑り出しは順調」とアピールした。
実際の消費者の動きを見てみると、それほど景気が良い話にはならなさそうだ。「インターネットコム」が07年3月に結果を発表した、官公庁・自治体・民間企業に勤務する20代~60代の男女330人を対象にした調査によると、自宅のOSが「ビスタ」だと答えたのは、わずか0.9%(3人)で、勤務先でビスタを使用している例は皆無だった。現在ビスタを使用していない人のうち、約75%が「ビスタに興味がある」と答えているものの、「ビスタ対応PCを購入予定」と答えた人はそのうち23.2%(57人)で、実際の購買意欲は低めだということが浮き彫りになった形だ。
乗り換えは、メモリ増設が前提
PCの出張サポートサービスを行っている「PCオレンジ」でも、
「新しいPCをお勧めする場合は、お客様が特に『ビスタ』を希望されない限り、基本はXPですよね。例えばデルでは、ビスタが搭載された機種とXPが搭載された機種の両方を販売していますが、皆さんXPをお選びになりますね」
と話す。
画面のレイアウトがXPとビスタでは大きく異なるため「新たにPCを買う時にも、使い慣れたOSで」という理由で、XPが選ばれるケースが多いのだという。また、
「(XPからビスタに)乗り換える場合は、メモリを増設することが前提です」
と、概してビスタの方が「重くなる」こともXPが引き続き支持されていることの背景にあるという。
ある50代の会社員が新しく買ったPCも「XP」がインストールされたものだった。
「パソコンを新しくする際、誰に聞いてもビスタはやめとけ、と言われました。立ち上げに5分かかるようになった、なんて恐ろしい話も聞きました。それに、『オフィス』は新しいバージョンを入れたのですが、操作に慣れるのに数時間かかりました。これでOSまで変わったら、もっと大変でしょう」
「次世代OS」が広く普及するまでには、だいぶ時間がかかりそうだ。