安倍晋三首相は米ブッシュ大統領と面会し、旧日本軍のいわゆる「従軍慰安婦」について改めて謝罪した。日本政府に謝罪を求める決議案が米下院に提案されたことに、安倍首相が「強制性はなかった」などと発言し、米メディアの報道が過熱していた。今回、安倍首相が謝罪して、米メディアの批判的報道は沈静化したかにも見える。しかし、米メディアに安倍首相がインタビューで「慰安婦の強制性に責任がある」と発言したかのような英訳記事が掲載され、「従軍慰安婦=旧日本軍の強制」、つまり女性を「強制連行」して売春を強要した、と解釈されるのではないかと心配される状況だ。
「強制された」という言葉、日本メディアは報道せず
「ニューズウィーク」に安倍首相は「慰安婦」強制性認めた?
安倍首相は2007年4月27日、ブッシュ大統領とワシントン近郊のキャンプデービッドで会談し、「人間として首相として心から同情する。慰安婦の方々がそういう状況になったことに対して申し訳ない思いだ」と従軍慰安婦について謝罪を表明。大統領もこれを受け入れる、とした。しかし、この安倍首相の謝罪をめぐっては、「誤訳」とも思える「謝罪」が海外メディアによって報道されている。
4月27日のBBC(インターナショナル)は安倍首相の発言について、
「極めて痛ましい状況に慰安婦の方々が強制的に置かれたことについて大変申し訳なく思う(I feel deeply sorry that they were forced to be placed in such extremely painful situations.)」
と英訳して報じている。この「強制された(forced)」という言葉は、日本メディアは総じて報道しておらず、安倍首相の発言を英訳する際の「誤訳」の可能性も十分にある。しかし、この「強制」という言葉がこのように報じられるのは、海外メディアでは今回に限ったことではないようだ。
今回の訪米に先立って安倍首相のインタビュー記事を掲載した米週刊誌『ニューズウィーク』4月30日号は、安倍首相の発言を次のように紹介している。
「私たちは、戦時下の環境において、従軍慰安婦として苦難や苦痛を受けることを強制された方々に責任を感じている(We feel responsible for having forced these women to go through that hardship and pain as comfort women under the circumstances at the time.)」
「いったん罪を認めたら、終わりである」
安倍首相は当初、「狭義の意味では強制ではなかった」として、旧日本軍が組織的かつ 強制的に従軍慰安婦を連行したとの見方を否定していたが、この英訳を見る限り「狭 義の意味での強制」さえも認め、1993年に日本政府が出した「河野談話」以上の謝罪を行ったと解釈されてしまう危険がある。
NHKディレクター出身で現在、上武大学大学院教授を務める池田信夫さんは『ニューズウィーク』の記事に「強制」という言葉が入っていることを先んじて自身のブログで指摘。「これで日本政府は『有罪』を自白したことになる」とした上で、
「これは痴漢の疑いで逮捕された容疑者が、『正直に認めないと家に帰れないぞ』と脅されて『自白』したようなものだ。いったん罪を認めたら、終わりである。植草一秀被告のように、後になっていくら『やってない』と主張して、大がかりな弁護団を組んでも無駄だ。世界史にも『日本軍が20万人の女性に性奴隷を強要した』という、とんでもない『史実』が残ることになるだろう」