経験のない「中立的」な人物が望ましい
一方の自主規制法人は、現行の東証から自主規制部門を切り離して発足するもので、そのゴールキーパー的な役割から、証券会社などの民間出身者よりも、法律家や学識経験者、官僚OBなどプレーヤーの経験のない「中立的」な人物が望ましいとの判断があった。だが、法律家や学識経験者に適材が見つからず、同じ東証の建物内に同居する日本投資者保護基金理事長の林氏に白羽の矢が立った。財政審の会長でもある西室社長が、財務次官時代の林氏をよく知っており、信頼関係にあったことも大きい。
政府の公務員制度改革関連法案では、国家公務員は退任後2年間、民間への就職ができないなど「天下り」が規制されるが、西室社長は「林氏は財務省を退職して2年以上が経過している」として、規制の対象にならないと主張した。ある東証幹部は「財務次官まで務めた識見の高い人物を民間企業が活用しない手はない。今の公務員制度改革をめぐる議論は、ひとたび官僚になったら、永久に民間に再就職してはならないというヒステリックな議論に聞こえる」と解説する。その主張は正論だが、一般にはわかりにくいということに、東証は気付かないようだ。