日本人数千人が、プードルと偽って羊を売られていた――そんな「珍報道」が世界中を駆け巡った。発端は、女優の川上麻衣子さんがテレビ番組で「プードルとして届いたはずが羊と分かった」という「噂話」を披露したことに始まるようだが、本人もこの「珍騒動」にはビックリのようだ。一体、何でこんなばかげた話が誕生したのか。
女優・川上麻衣子さんがトーク番組で披露
「サン」では、ご丁寧にもトリミングした「羊」の写真を掲載
英国のタブロイド紙「サン(THE SUN)」は2007年4月26日、こんな「珍」情報を報じた。
「何千もの裕福な女性が、子羊を高価なミニチュア・プードルといわれて、業者にだまされた。(中略)このおかしな詐欺は、日本の映画女優・川上麻衣子さんがトーク番組で、彼女の新しいプードルが吠えたり、ドッグフードを食べなかったことを披露したことから明るみになった」
同紙はさらに、何百もの女性が、札幌を拠点とした業者にプードルと偽って羊を売られたため、警察に届け出た、などと報じている。さらに被害者は2,000人にも上るらしい・・・。さらに同日の英国メディア・メトロ(METRO)も「何千もの人がプードルだと思ってトリミングされた子羊を買って『だまされた(fleeced)』」などと報じている。なんだか、ありそうもない「珍報道」だがこの報道は世界中を駆け巡った。
騒動の発端は、川上麻衣子さんが4月中旬にフジテレビ系のバラエティ番組「ごきげんよう」で披露したトーク。「プードル」として届いたはずが、えさを食べないために医者に診せたところ、羊だったことが判明した、のだという。もちろんこれは川上さんが飼っているプードルの話ではない。 川上さんの所属事務所によれば、「(川上さんが)通っているネイルサロンで聞きつけた噂話を披露した」のだという。それが、突然オーストラリアのテレビ局に取材を受け、英国メディアが「川上さんのプードル」の話として報じていたことが明らかになったようなのだ。
当の川上麻衣子さんは07年5月1日放送の「スーパーモーニング」のインタビュー取材に応じ、
「私がプードルを羊と間違えて飼ってるみたいなことになってたんで、もうびっくりして」
「実際に被害にあったとか、そういうのは私は1件も知らないし」
などと語っている。
「記事は完全にでっち上げだということだ」
CBS、CNN、オーストラリアやドイツのメディアにも取材を受けたようだが、どうやら、英国メディアが報じた「珍報道」は「誤報」の可能性が高い。
日本社会福祉愛犬協会(KCジャパン)もJ-CASTニュースに対し「(プードルと偽って羊を売るという話は)聞いたこともない」と話す。同協会によれば、プードルと羊との違いは、(1)プードルは1歳近くにならないと毛が生え揃わないため、トリミングできない(子羊は毛が生える)(2)寝るときなどの足の折り方が違う(3)プードルは犬歯があるが、羊は草食動物なのでない(4)プードルは肉球があるが、羊は無い(5)鼻の形も違う、などなど「分からないはずが無い」ほど違いがあるのだという。
どうやら英メディアなどは、日本人が羊のことを知らないと思ってだまされたと考えているようだが、このくらいの違いは、飼ってみればいとも簡単に見つかりそうなものだ。日本のネット上でも「都市伝説だろ」といった声が上がっている。
もっとも、「誤報」だということにも海外メディアも気づき始めている。オーストラリアメディアのオーストラリアン(THE AUSTRALIAN)も07年5月1日、札幌の警察の報道官の話として次のようなコメントを紹介している。
「CNN、CBSなどのたくさんのメディアから取材を受けたが、私が言えるのは、(プードルと偽って羊が売られたという)これらの記事は完全にでっち上げだということだ」
一方で、川上さんの所属事務所の担当者は次のように語る。