秋田県で電線を盗んでいる最中に電柱から落下、相棒がその死体を新潟の山中に埋めるという奇異な事件が2007年5月1日に報道された。しかし、全国的に広がる金属の盗難は電線に限らない。側溝のふた、車止め、水道の蛇口、お寺の鐘、すべり台、エアコンの室外機まで手当たり次第に盗まれる。こうした盗難の背景にあるのは「メタルバブル」なのだそうだ。
70%以上の金属窃盗事件は未解決のまま
ポストまで盗まれる?(写真はイメージ)
従来の金属類の窃盗といえば、鉄筋加工会社の資材置き場などから盗む、のが典型例だった。が、最近はこんな風だ。
「半鐘やすべり台が盗まれてあきれていたら、ポストまで盗難にあった」「パターゴルフ場を囲っていたステンレス製のチェーン200メートル(30万円相当),重さにして200キロ前後が盗まれたのだ」(朝日新聞07年2月24日付)
「道路側溝の鉄製ふたの盗難が今年に入り、県内で多発している。被害は少なくとも計二百六十五枚」(茨城新聞07年2月19日付)
「東武伊勢崎線南羽生駅に近い東口駅前広場や県営住宅、市営住宅で、車止め8本(計約50万円相当)が盗まれていた」(読売新聞07年3月13日付)
警察庁の調べによると、06年に金属類の窃盗が5,701件発生し、その被害総額は20億円。しかし、検挙できたのは1,562件(444人逮捕)にすぎず、70%以上の窃盗は未解決のままだ。06年に金属窃盗が606件と全国でワースト1だった大阪府だが、07年2月までの2ヶ月間で316件、総額7,000万円相当と、金属窃盗事件が早くも昨年の半分にまで達した。大阪府警は07年3月9日に全国初の専従チーム「金属材窃盗事件対策室」を設置するなど、防犯対策に追われている。
なぜ金属が盗みのターゲットになっているのか。それはくず鉄、銅などの価格が高騰する「メタルバブル」が起こっているからなのだという。「バブルの震源地」と各マスコミが報じているのが中国だ。08年の北京五輪や10年の上海万博を控え、「いくら金属を輸入しても足りない状態」などとされる。そうしたことで、くず鉄相場は、01年7月は1トンあたり6,400円だったが、現在は5倍にあたる約3万1800円に上昇。銅の販売価格は99年3月に1トンあたり21万円が、現在は78万円と数倍になっている。