「2008年採用はや争奪戦」「来春採用に躍起」。07年に入っての新聞記事の見出しだ。有効求人倍率が厚生労働省の2007年3月の季節調整値で1.03倍数と、1年以上連続で1倍を超えている。ひところの「就職氷河期」から一転、企業も人手不足感を持ち始めた。そうした中、ひところ当たり前のようにいわれた「転職35歳限界説」もあやしくなっている。
35歳超の求人も転職実績も伸びる
揺らぎつつある「転職35歳限界説」
35歳を過ぎても仕事はあるのだろうか。テレビCMなどでも見かける複数の転職サイトで公開情報を検索してみた。条件欄で「正社員」は共通にして、年齢を「指定せず」と「36歳以上も含む」の2種類で検索した。一つのサイトは、「指定せず」約4,000件に対し「36歳以上可」は約1,000件で27%。別のサイトは、同様の割合が41%だった。ないというわけではないが、いろいろ幅があるようだ。
転職サービス「DODA(デューダ)」を運営するインテリジェンス(東京・千代田)に話を聞いた。「生数字は明らかにしない」とした上で、同社が把握している傾向を解説した。36歳以上で実際に転職が決まった人は、07年の1~3月期は昨年同期より約1.2倍に増えた。全体の伸び率と比べても少し多い数字という。36歳以上も応募可能な求人状況をみても、07年1~3月期は、半年前より約1割増えている。
総務省の労働力調査を見ても、転職した人(前の仕事をやめてから1年以内)は2006年で346万人。2002年より19万人増えている。このうち、35~44歳はどうか。06年は67万人で02年と比べ14万人も増えている。全体の増加の約74%を占めている。06年の全転職者のうちに占める35歳以上の転職者の割合は約44%に上る。 確かに、ひところに比べると改善傾向だ。
求められるのは「専門性やマネジメント能力」
「新卒や第2新卒を増やしてみたものの、彼らを指導するリーダー的層が薄い社が多い」というのが背景の一つと分析する。団塊ジュニア世代と言われる35歳前後の人たちが新卒のころは「就職氷河期」だったため、その世代の社員数に「手薄感がある」というのだ。団塊世代の大量退職が始まる「2007年問題」も新卒や第2新卒の若手では補えない問題を企業へつきつける。
しかし、だれでも「売り手市場」なのか。
「IT関連業界だと35歳過ぎでの求人は皆無に等しいです」「よく35歳限界説という言葉を耳にしますが、まだ2年あるというべきか、もう2年しかないというべきか」。あるブログの4月の書き込みだ。限界説を強く意識した「会話」が交わされている。就職・転職活動の指導に当たっているという人が「35歳限界説の真偽のほどですが、これは概ね事実です」と解説する2月末のブログもある。
35歳超の人材に求められるのは、「専門性やマネジメント能力」で、「企業はいくら手薄感を持っていても、要求する水準を下げる気はありません」。前出のインテリジェンスはこうくぎを刺す。逆に言えば「売り」がある人にとっては、「35歳限界説」は揺らぎつつある。