ヒルズ・エレベーター火災 「あり得ない」異常事態

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    東京・六本木ヒルズの「森タワー」で火災が起きたエレベーターのワイヤの表面は、赤さびに覆われていた。事故機の「日本オーチス・エレベータ」(東京・中央区)社製のエレベーターは、同ビル内のほかの1基にも深刻なワイヤの一部破断があった。行政関係者や業者が「あり得ない」とあきれる異常事態だ。定期検査とは何だったのか。

   国土交通省は2007年4月26日、日本オーチス社が管理する5万6,000基の緊急点検を、各自治体を通じて指示した。同社の点検や管理がずさんだったことが火災の一因とみての措置だ。同日、ビルを管理する「森ビル」とオーチス幹部も国土交通省で会見を開いた。オーチス幹部は「ワイヤの状態が汚れで見えにくくなっていた」と認めた。

「定期検査では何も見てなかったのと同じ」

「定期検査では何も見ていなかったのと同じ」「相当以前から放置していたはず」

   火災が発生した4月4日直前の3月22日に終えたばかりの法定の定期検査について、国土交通省関係者らが大手新聞社に語っている。「汚れを取らなければ傷は見つけられない」とも指摘している。同ビルは2003年4月に開業。2007年6月にワイヤを交換する計画だった。「あと2,3カ月で交換という意識が働いたのかも」と指摘する関西のメンテナンス業者も「というよりも、1年かそこらほっといても(報道の写真でみる限り)あそこまでさびで汚れるだろうか」と不思議がる。

   国交省の調べでは、ワイヤの一部が破断し、他の金具とこすれ合って発生した火花が原因とみられている。問題なのは、この破断が「ストランド」と呼ばれる束ごと切れたことだ。ワイヤを作るには、素線とよばれる細い鉄線を19本より合わせ、1束(ストランド)をつくり、さらにこのストランド8束でワイヤ1本となる。ワイヤ8本でエレベーター1基を支えている。検査基準では箇所により数値は変動するが、束以前の素線が何本か切れた段階でロープ全体を交換するよう求めている。束ごとの破断は「普通に点検していればありえない」と国土交通省も複数のメンテ業者も口をそろえる。

   社団法人日本エレベータ協会(東京・港区)によると、「(事故機は)上かごと下かごを同時に動かす大型タイプで国内でも数カ所しかない」という。ワイヤが切れても安全装置が働き落下することはないそうだ。

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