税制恩典の消滅で雪崩をうつ
協同組織金融機関のあり方は1990年、当時の金融制度調査会第一委員会で審議して以来、16年ぶりのこと。その後のバブル崩壊とそれに伴う不良債権処理で経営破綻や合併を繰り返してきた信金・信組は、90年の454信金から287に、414信組から168にまで数を減らした。
しかし一方で、地域によっては規模で銀行を上回ったり、業務面でも銀行とほとんど変わらないにもかかわらず法人税制の恩典がある信金・信組の存在は、かえって「地域金融機関の競争を不平等なものにしている」(第二地銀の幹部)との指摘となってくすぶっていた。
ある地銀関係者は、「財務省は財源不足に頭を痛めていることもあって、税制の恩典をなくしたいようだ。おそらく恩典はなくなるだろう」と話す。信用金庫から普銀転換した、唯一の銀行である八千代銀行は4月19日に、待望の東京証券取引所第1部への上場を果たしたばかりだが、そんな同行にも、普銀転換を模索している信金・信組のようすが漏れてきているようだ。
4月24日付の日本経済新聞は、大阪に本店を置く在日韓国人系の近畿産業信用組合が普銀転換へ向けて準備を進めていることがわかった、と報じた。同信組は06年6月に、同じ在日韓国人系の長崎商銀信用組合と合併し、「地域」の垣根を越えている。預金量は5,682億円(06年3月末)。普銀転換すれば、信組固有の融資制限や地域の制限も解かれる。認可は流動的だが、「認められる公算は高い」(信金役員)とみる向きもある。
ちなみに、信用組合からの普銀転換は、相互銀行を経て転換した長野銀行の例がある。
信金・信組業界は猛烈に反発するだろう。しかし、前出の信金役員は「税制の恩典がなくなれば、信金でいる理由がなくなる。八千代銀行が普銀転換したときから、『次はうち』と公言していたところもあり、雪崩をうって(普銀)転換する」という。
金融システムがようやく安定化してきたというのに、信金・信組業界は一転、存亡の危機に立たされた。